自然に親しみ、観て触れて学びながら、自然を守ろう

「共に生きる」とはどういうことか

行事報告

「共に生きる」とはどういうことか

広島大学 文学部 人文学科 増田 尚哉

 私が今回の「生涯学習エコバスツアー」(2012 年11 月18 日)に参加した主な目的は、やはりオオサンショウウオの人口巣穴とそこに生息するヌシや幼生の見学だった。
 私自身広島大学いきもの会に所属しており、微力ながらも椋梨川でのオオサンショウウオ調査に協力しているため、オオサンショウウオという生物がどれほど貴重な存在であるのか、そして今現在どれほど厳しい生育環境に身を置いているのかということを知っている。そんな彼らに対しての「三ちゃんS村」の活動に興味を抱いたのと同時に、オオサンショウウオのより詳しい生態、とりわけ繁殖に関する行動を学ぶことで、これからの調査をより有意義なものにできると考えたからである。
 実際に前述の目的において、私は大変満足できる成果を上げることができた。人口巣穴では光を完全に遮断し、人の目に極力触れないようにすることでオオサンショウウオが安心して幼生を育むことができるように最大限の配慮がなされており、また巣穴周辺の環境においても、河岸や河底を決してコンクリート打ちっぱなしにはせず、彼らが歩きやすいように石やスロープを設置するなど、人間の生活に配慮しながらも彼らの生息環境を少しずつでも守っていこうという「三ちゃんS村」の方々の思いや試みに深い尊敬の念を覚えた。
 学習の面においても、幼生の餌やヌシの決定方法、彼らの養育期間や成長後の行動、果てには産卵後のメスのその後など、私が抱いていた数々の疑問を今回のツアーでは明らかにすることができた。実際に巣穴で生息しているオオサンショウウオとその幼生を見ながら説明を受けることで、より効率的に知識を吸収できたと思っている。
 そしてなによりも今回のツアーに参加された皆様の、オオサンショウウオに対する意識の高さや熱意、知識を感じ取ることで、自分の至らなさを見直すいい機会を持つことができたのが最大の収穫であったと思う。学習面精神面、意識の向上という面においても今回のツアーに参加して本当に良かったと感じた。
 と、このままオオサンショウウオ関係の話に終始して今回のツアーの感想を終えてしまうのもいいが、それではいささかもったいないと思われる。今回散策した北広島町ではオオサンショウウオ以外にも素晴らしいものがたくさんあった。そこで行われた様々な体験や活動に目を向けてツアー全体を通しての感想を述べてこそ、初めて北広島町という町を満喫したと言えるのではないかと私は思うのである。
そのような視点で見ると、今回の北広島町の散策は自然の美しさや環境への配慮はもちろん、歴史の知識やロマンまで体験できる素晴らしいものであった。昼食時に美味しい蕎麦をいただいて、頭だけではなく胃袋でも満喫できたというのもありがたい。
 さて、では自然の美しさというところに目を向けてみると、やはり大朝町のテングシデ群落を外すことはできないだろう。が、恥ずかしながら私、いきもの会というサークルに所属しておきながら殊植物に関しては中学生並みの知識しか持ち合わせていないということをここに告白しておきたい。分かるのは精々カブトムシの好物であるクヌギの木だけという体たらくである。そのような私がテングシデという存在を知っているはずもなく、ましてや国の天然記念物であることも、これほど大きな群落は世界でも類がないということも当然の如く知らなかった。
 それでも実際にテングシデを見ると、ああ確かにこの木は天狗以外の何物でもないな、と感じた。いかにも天狗が潜んでいそうなほど捻じ曲がった枝や幹、お伽草子の挿絵をそのまま貼り付けたように幽玄的な風景は、この群落の希少さを否応なく私に印象づけた。
 なるほど、確かに天狗だ。伝説上のもの、実在しないものでしかこの儚さを表すことはできない。かといって他の名前じゃいけない。テングシデという名前だからこそこの感覚が生きるのだ。この木を見てみろ、いかにも天狗のイメージにぴったりじゃないか。カッパシデなんて名前をつけてみろ、一気に興醒めしてしまう。
 そんな取り留めのないことを見学中ぼんやりと考えていた。また下から見上げると、曇天の空に群落が貼り付いてそれこそ一枚の挿絵のように見えるのだ。大変面白かった。どうやら私はこの光景にやられてしまったらしい。
 さて、次の行き先は歴史館である。私は歴史について一般常識的な知識しか持ち合わせていないため、吉川元春という人物を知ったのはこの時が初めてだった。そして実際に歴史館を見学したのだが、まずは出土した資料の多さに驚いた。ガイドの方によると貴重な品は別の地域に移したとのことだが、正直有難い刀や鎧を見ても、学のない私には違いがよくわからない。それよりも当時の人々の生活に直結した出土品や資料を見学することで、より過去に思いを馳せることができたと思う。すぐ真横の館跡においても、歴史を身近に感じることを最優先に展示が行われていることを感じることができた。

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