「木谷はっけん野あそび会」について
「木谷はっけん野あそび会」について
古本 敦子
「子どもたちを野山で思い切り遊ばせたい。自然にまみれて心が解き放たれて遊ぶ中から、自然を見る眼を養っていきたい。」というのが、私の活動の一番の動機です。
私は安芸津町の東部、木谷地区に住んでいて、3年前から「木谷はっけん野あそび会」という子ども向けの自然体験行事を開いています。まだまだ発展途上の試みですが、今は春にシロウオ捕り(写真1)、初夏にホタル観賞、夏にアカテガニの産卵観察をしています。
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地域の子どもたちに地域の自然の魅力を再発見してほしい趣旨の会なので、発足当初は地域外への案内をしていませんでしたが、昨年から西条の親子にも参加してもらっています。
去る3月末の「シロウオと遊ぼう」の会では、30人ほどの小学生らが木谷小学校周辺の浅い川の河口部に入り、2時間かけてシロウオ探しに興じました。最初に少しシロウオの生態を話しましたが、あとはひたすら子どもたちの心のままに捕り続けました。
当日の潮や水温などの状態で、シロウオの取り方も違いますし、昔の子どもたちがやっていたように、子どもなりに試行錯誤して、互いに教え合い、協力しながらシロウオと格闘するのがこの会の醍醐味だと思っていますので、私はあまり口を出しません。
次第に子どもたちは何人かで協力し、下流に石で小さな堰をつくり、その間に網をしかけ、上流から石や葉っぱをゴソゴソ動かしながら追ってくるようになりますが、これが一番よく捕れる方法のようです。
2時間の間に、シロウオ以外にもハゼの仲間がいろいろと、ウナギの稚魚も捕れます。状況によりますが、みんなで合計すると数百匹のシロウオが捕れます。時間があれば、つかまえたシロウオを透明なカップに入れて、よく観察してみます。お腹の浮きぶくろだけでなく、扁平でかわいい顔をしていることにも気づきます。子どもたちは喜び勇んで家に持ち帰り、収穫を親に自慢し、シロウオはその日の食卓に上ります。
ひと昔前のように、野山で自然にまみれて遊ぶことは、今の子どもたちには特別な機会をつくらない限り、なかなか難しいことです。田舎の子どもたちも都市部とあまり違いはありません。周囲に豊かな自然があっても、子どもの数が少ないし、安全面への配慮から、そのような遊びは継承されず、家の中でゲームをするか、遊具のある公園などで遊ぶかです。子どもに農作業を手伝わせることが少なくなったのも一因でしょう。むしろ都市部の自然好きな親をもつ子の方が、週末に自然の中に出かけて自然と関わる機会を持っているのかもしれません。
私は大学で昆虫生態学を専攻し、エゾスジグロシロチョウと食草のハタザオ族植物の適応的関係を研究し、その後は兵庫県の伊丹市昆虫館で学芸員をしていましたが、主人の転勤に伴い7年前に実家のある東広島市にUターンしてきました。田舎で子育てがしたいという小さな夢が叶い、海辺の里山で3人の子育てをしながら、母親の目線で地域の自然体験行事をささやかに企画しています。
今の仕事は、広島市に事務所のある「NPO法人ひろしま自然学校」に所属しており、豊平の里山を整備した「ろうきん森の学校」を主なフィールドに、自然体験行事を企画運営しています。
ここ2年ほどは幼児期の自然体験の重要性を感じ、北欧で流行の「森のようちえん」に憧れ、幼児の親子向けの日帰り森遊びに取り組んでいます。環境教育の仕事をする機会も多く、広島市や福山市など自治体主催の講座や、学校などでの様々な教育機会に携わっています。
地元の木谷小学校の「ホボロ島」学習(写真2)は、当初はある企業スポンサーの学校の環境教育支援プロジェクトの一環で始まりました。当初は崩れゆく無人島に上陸し、生物調査をしようと私が企画したのですが、その際、たまたま当時自然研会長の沖村先生に講師派遣をお願いしたことから、先生にホボロ島での「大発見」をしていただく機会に恵まれました。ホボロ島の謎が明らかになる学術的にも意義深いプロセスを、木谷小学校の子どもたちがリアルタイムで学んでいく、またとない幸運でした。以来、5年生のホボロ島上陸学習は恒例となり、崩れゆく島の謎を肌で感じ、島の豊かな生物相を実感しています。
元々専門でない海辺の自然ですが、子どもたちとその不思議をわかちあい、ふるさとの魅力を再発見する楽しさにはまり、このような活動をライフワークとして、さらに深めていきたいと考えています。自然研の皆さんに学びたいことは山ほどありますので、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
東広島の自然(2012.3)No.43 掲載