自然に親しみ、観て触れて学びながら、自然を守ろう

『まるごと西中国山地』に参加して

『まるごと西中国山地』に参加して

道野 忠司

 2009年10月25日のエコバスツアーは、安芸太田町を中心に旧加計町の吉水園、旧芸北町八幡高原の自然館、尾崎湿原、大歳神社、旧戸河内町の筒賀神社と広範囲の地域を足早に見学しました。

 私は芸北地域に近い安佐北区安佐町に住んでおり、末森役員のエコバス原案を基に沖村会長、土岡事務局長、末森さん、金原さんと下見をさせて頂きました。

 吉水園は閉園中でしたので、会長が加計隅屋さんにお願いし、特別に見学することができました。当日行く先々で会長や堀越先生に楽しく教えていただき、実りの多い、充実した一日になりました。

 このことは、吉水園を特別に開園していただいた加計正弘さん、佐々木支配人、高原の自然館の白川学芸員さん、八幡湿原のボランティアガイドの杉本さん、筒賀神社の梶原神主さんのおかげだと思います。この場をお借りして、皆さんに厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 「晩秋の八幡高原に行く」とのことで、内心天候が気になっていました。以前、10月末に八幡高原にドライブに行った時に、突如雪が降り出し、あっと言う間に20㎝近く積雪しました。タイヤチェーンを携帯していなかった私は、八幡の洞門を越えるのに大変苦労したことがありました。しかし、今回は大変良い天気に恵まれ、8:00過ぎに東広島市役所に集合し、予定どおりに出発しました。

 途中、久地PAに立ち寄り、加計スマートIC、旧道R191より加計町の町並みに入り、そこから安芸太田町交流館(旧JR可部線加計駅)にバスを駐車しました。ここから徒歩で北西側約10分の所に吉水園があります。

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1.吉水庵.jpg 吉水庵

2.吉水.jpg 吉水

3.風景.jpg 吉水庵高間からの風景

4.内部.jpg 吉水庵内

 吉水園は、現在加計隅屋24代当主加計正弘氏が所有、管理されており、江戸時代の天明元年(1781年)の春に16代当主佐々木八右衛門正任が、この景観に着目して、山荘として建てたと伝えられています。庭園は回遊式で、昭和26年、県名勝に指定されています。

 この吉水園の名の由来は、裏山(五輪山に繋がる南尾根の末端に位置する)の黒雲母花崗岩風化土にY字状の横穴を堀り、染み出た清水を導いて上手鉢に落とす工夫がされていて、その水が大変まろやかで美味いということが名前の基となっています。

 入母屋造茅葺の吉水庵高間から望む池、樹齢300年を越すイロハモミジと太田川の清流、隣接する急峻なやまなみを眼下に見下ろしていると、殿様になったような気分になります。絶景です。

5.高間.jpg 吉水庵高間

6.会長.jpg 佐々木支配人と会長

 ここには太田川の円礫で造った見事な石垣があります。言い伝えによると、飢饉の時、鉄山経営の大手であった加計隅屋家が、地区住民の救済に炊き出しを行い、そのお礼として村人が遥か下の太田川より運んで築いたと伝えられています。

 園内に珍しい植物もあります。暖地を好む鹿子の木(カゴノキ)の古木です。木肌が鹿の斑模様に似ている所から名前がついたそうです。また、コウヤマキの珍しい花も初めて見ました。山口誓子の句『藻の畳 もりあおがへる 落ちてよし』もあり、古の吉水園の奥ゆかしさや侘び寂びの中に華やかさを堪能できた一時でした。

 吉水園の見学を終え、八幡高原の自然館を目指して蔵座高原まで来ると標高1153mの深入山の雄峰が目に入り、牧場的な山裾のススキと紅葉が目を楽しませてくれました。「刈尾庵」で昼食を取り、「高原の自然館」で白川勝信先生から芸北の自然についての説明を聞かせてもらいました。

7.堀越先生.jpg 堀越先生と会員

8.コウヤマキ.jpg コウヤマキの実

9.句碑.jpg 山口誓子の句碑

10.カゴノキ.jpg カゴノキ

 芸北地方は日本海側と瀬戸内海側のブナとクロモジの群生が特徴的で、ブナは東北に合った木で雪を好む植物、と教えていただきました。

 八幡湿原が形成されたのは今から約8千年~1万年前で、北東-南西方向の断層が八幡でほぼ直角方向に切れており、地震で崩れて堰止湖ができたと推測されると聞きました。そこに、高冷地のため養分に乏しく雨水を頼りとしたミズゴケが繁殖し、ピートモスの分厚い所では6~8千年間で100~120㎝にも達したそうです。ミズゴケは、一旦破壊されると元に戻るには気の遠くなる歳月が必要と聞き、環境保全の大切さを知りました。

11.白川先生.jpg 白川先生と会員

12.リンドウ.jpg リンドウ

13.カンボク.jpg カンボク
 
 尾崎湿原は自然館から北西に5分程度の場所にあり、芸北ボランティア協会の杉本さんより左周りに案内していただきました。

 途中、リンドウの可憐な紫一点の姿は、笹の緑と茅のベージュ色のアクセントになっています。その他にもヤマラッキョウの紅紫色の花、オタカラコウの黄色い花、マユミ、カンボクの赤い実など晩秋を彩る植物が散策道沿いに点在し、目を楽しませてくれました。あっというまに堰堤に辿りつき、記念写真を撮影。皆さんの笑顔が大変ステキでした。

14.尾崎沼.jpg 尾崎沼

14.記念撮影.jpg 尾崎湿原で記念撮影

 そこから2分程度の大歳神社に立ち寄り、境内にある樹齢450年の見事な杉と、長年の風雪に耐え抜いた苔むすブナの大木がとても印象的でした。当り一面には常緑のヒメカンアオイがびっしりと群生していました。

15.大歳神社.jpg 八幡大歳神社

16.ブナ.jpg 逞しいブナ


最後の目的地は筒賀神社です。到着後は梶原神主さんが案内して下さいました。

17・神主.jpg 筒賀神社の神主さんと会長

 筒賀神社の「大銀杏」は推定樹齢1100年の日本一と言われ、幹廻り8.2m高さ49mもある大木です。イチョウは有史以前の約2億5000万年より現代まで、脈々と生命を受け継いでいる、“生きている化石”(遺存種とも呼ばれ、太古の地質時代に生きていた祖先種の形状を色濃く残している生物をさします)と言われる生命力の強い植物です。

 会長よりイチョウは『個体発生は系統発生を繰り返す』代表的な植物の一つで、一年の枝の中で進化の過程が見える(光合成を行う上で、地質時代の細い葉からより効率の良い扇形に進化した)と教えていただきました。

 イチョウが発見されたのは中国で、その昔、お寺などの境内に実生、接木で植えられたものが、1100年頃日本に伝来し、広まったとされています。

 平安時代末期の治承2年、神主さんのご先祖がこの地にこられた時にはすでに銀杏の大木があったそうで、この銀杏の上に鶴が舞い降り、稲穂を落として行ったそうです。そのご縁でここに筒賀神社を祭る基になったと神社の由来をお話しされました。

 不思議なことに、この雄の木に雌の枝があり、9月に実がみのると聞きました。生命の不思議に驚きです。帰り際に、堀越先生よりこの大銀杏の木に触って逞しい生命力を感じていただきたいと勧められ、神主さんも一緒に皆さんで手をつないで大銀杏を囲み、その感触を味わいました。この木のようにいつまでも逞しく元気でありたいものです。

 予定時間をかなり過ぎ、東広島市役所に戻ったのは18:00でした。
今日は自然にたっぷりと浸り、日常の気ぜわしさを忘れさせてくれる楽しい一日でした。また、多くの方にいろいろなことを教えていただきました。学び多い、思い出に残る充実した一日だったことを報告します。本当にありがとうございました。

18.大銀杏.jpg 大銀杏の生命力に触れる会員

 

19.大銀杏2.jpg 大銀杏

東広島の自然(2011.3)No.42 掲載

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