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帝釈台と油木の旅

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写真1 備後砂

ミーアキャットです。
 11月9日,中国新聞文化センターで『シルクロードにさんご礁を探して』という講座を行われている当自然研の沖村顧問の野外授業に参加しました。
 行き先は広島県庄原市東城町と神石高原町油木(ゆき) で,総勢22人です。東城町の帝釈台では,大理石鉱山・リンゴ狩り・下帝釈の紅葉と昼食,神石高原町油木では西川化石標本室・福枡川渓谷の紅葉の見学です。

(1)大理石鉱山
 純度の高い大理石(晶質石灰岩)を産出するN鉱山は,有名な石灰岩地帯『帝釈台』にあります。古生代石炭紀~二畳紀のさんご礁石灰岩に,花崗岩が貫入した場所で,石灰岩がいったん溶融して再結晶した晶質石灰岩が分布しています。

写真2 大理石鉱山で沖村先生のレクチャーを受ける.jpg
写真2 大理石鉱山で沖村先生のレクチャーを受ける

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写真3 大理石(晶質石灰岩)鉱山

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写真4 白くきらめく大理石(晶質石灰岩)

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写真5 青白く輝く大理石(晶質石灰岩)

 当鉱山の晶質石灰岩は,方解石の結晶が大きいものでは1~3㎝もあり,キラキラと白く輝く様子はとても美しく,旧くから『備後砂』と呼ばれ珍重されていました。

写真6 備後砂.jpg
写真6 備後砂

 ネット資料の『戦国日本の津々浦々http://proto.harisen.jp/mono/mono/binngozuna.htm 』によりますと,広島藩により作成され1825年に完成した地誌『芸藩通志』にはつぎのように記載されているそうです。
『夏森巌(前略)打破けば,みな雪のごとし,盆山,盆栽の根に敷き,又細末にしては景盆に用ふ,光沢ありて愛玩すべし,世に備後砂利と称す是なり,土人は地名を以,夏森ざりとよべり』
 また,同ページにはつぎのように書かれています。
 『備後砂は上記の”芸藩通志”の記述にもあるように,室町期に遡って,枯山水式石庭や盆石(黒い盆の上に砂を敷き,石を配置するなどして箱庭を造形する芸術)の流行の中で,その敷砂として珍重された。室町期に成立した狂言の「萩大名」にも「ああびんごずなでござる」の言葉があり,備後産の白い砂として登場することから,当時の京都周辺でも有名な品であったことが分かる』

 まれに,下の写真のように複屈折がきれいに見える方解石の透明な結晶が見つかることもあります。

写真7 透明な方解石の大きな結晶.jpg
写真7 透明な方解石の大きな結晶

(2)リンゴ狩り
 N鉱山では,掘削の際に剥いだ表土などが階段状に盛土されているのですが,
その場所がリンゴ園として利用されています。鉱山の御好意によりリンゴ狩りをさせていただきました。蜜のあるとてもおいしいリンゴです。

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写真8 リンゴ

写真9 リンゴ狩り.jpg
写真9 リンゴ狩り

 リンゴを結実させるためには,相性のいい別の品種を植える必要があるそうで,ここでは授粉用にヒメリンゴが植えてあると聞き,案内してもらいました。今回初めて見たのですが,直径4㎝くらいの小さいリンゴです。

写真10 ヒメリンゴ.jpg
写真10 ヒメリンゴ

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写真11 ヒメリンゴをこんなに収穫された方も

 広島県の地形は,脊梁面・吉備高原面・瀬戸内面と3段の地形によって特徴付けられますが,このリンゴ園から,吉備高原面がよく見えました。標高450~600m程度の定高性の高原です(写真12)。

写真12 吉備高原面.jpg
写真12 はるか向こうに吉備高原面

(3)下帝釈
 リンゴ狩りの後は,下帝釈に移動して昼食です。途中でバスの車窓より帝釈峡の神龍湖が見えました。この時期は遊覧船で紅葉狩りされるお客さんも多いことでしょう(写真13)。

写真13 車窓から神龍湖を望む.jpg
写真13 神龍湖

写真14 昼食.jpg
写真14 昼食

 昼食会場のホテルの土産物売り場には,オオサンショウウオがカエルをくわえたぬいぐるみがありました(写真15)。

写真15 カエルを食べるオオサンショウウオ.jpg
写真15 オオサンショウウオの土産

 昼食の後,近くを散歩してみましたら,大変な人出で,駐車場はどこも満杯でした。紅葉は最も見頃を迎えているようです(写真16~19)。

写真16 下帝釈の紅葉.jpg
写真16 

写真17.jpg
写真17

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写真18

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写真19

 この後,つぎの神石高原町の油木に移動するのですが,車窓より石灰岩の断崖絶壁と紅葉が見られました(写真20)。

写真20 車窓より石灰岩の絶壁を望む.jpg
写真20 石灰岩の絶壁と紅葉

(4)西川化石標本室
 神石高原町の油木で,お酒屋さんを営まれている西川功さん(91歳)が作られ
ている『西川化石標本室』を見学しました。

写真21 西川さん宅前でお話を聞く.jpg
写真21 お宅の前で西川さんからお話を伺う

写真22 標本室の入口.jpg
写真22 標本室の入口

写真23 標本室.jpg
写真23 標本室の内部

写真24 標本室.jpg
写真24 同上

写真25 標本室.jpg
写真25 同上

 化石・鉱物・岩石・地質図・写真などあらゆるものが所狭しと陳列してありました。特に郷土の地質や化石には詳しい解説が張ってあり,興味深く見学させていただきました。よくここまで,収集されたものだと思います。西川さんはこれまで大学の先生方と論文をたくさん出されていて,最近も出されていると沖村先生からお聞きしました。

写真26 偏光顕微鏡も完備.jpg
写真26 偏光顕微鏡も完備されています

 標本室の隣の屋敷の石垣には,玄武岩の柱状節理の六角柱の石材が使用されていました。仙養ケ原というところに分布する,第四紀の玄武岩の溶岩だと沖村先生に教えてもらいました。きれいな石垣です(写真27~28)。

写真27 玄武岩の石垣.jpg
写真27 玄武岩の石垣

写真28 柱状節理を生かしたきれいな石垣.jpg
写真28 同上

(5)福枡川渓谷
 帝釈峡を流れる帝釈川の支流に福枡川があります。神石高原町のこの深いV字谷に大きな橋が架かっています。神石広域農道の”福枡川大橋”といい,橋長は279m,福枡川の上空約100mだそうです。ここからの渓谷の紅葉もすばらしいものでした(写真29~30)。

写真29 福枡川大橋より福枡川渓谷を望む.jpg
写真29 福枡川渓谷

 橋の形状が真上からはよく見えないのですが,西日が紅葉した斜面に当たっていましたので,橋のアーチの影がよく分かりました(写真30)。

写真30 福枡川大橋の影が映る.jpg
写真30 福枡川大橋の影が映っています

 この橋の上で,渓谷をバックに全員で記念撮影して,本日の野外授業は終わり,帰途についたのでした。沖村先生の講座をきっかけにして親しくなったみなさんと一日を共にしながら,知的好奇心を刺激する旅は何回参加しても楽しいですね。



コメント

  • お天気も最高。紅葉も最高。食事も。リフレッシュできて良かったですね。オオサンショウウオのおまけまであるとは! -- ぬしです 2013-11-12 (火) 10:26:23
  • オオサンショウウオのぬいぐるみの写真は,行けなかったヌシさんのお土産用に撮ってきました。早く元気になって下さい。 -- ミーアキャットです。 2013-11-12 (火) 14:15:27

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