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ブログ/2022-05-12

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火山灰層の話-「東広島の自然誌Ⅱ」から

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写真1 表紙

小ヌシです。
当会顧問の沖村雄二先生著「東広島の自然誌Ⅱ 西条層-古黒瀬川-幻の湖」(2009年発行A4サイズ70P)には、西条層に挟在する多くの火山灰層の研究も紹介されています。
白木山の姶良火山灰の地層(ブログ/2022-04-20)に続いて、またまた「火山関係」の話題ですが、近場の話ゆえ、お許しください。写真1,2

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確認されている7つの火山灰層は下位から楢原(0.61±0.11Ma)火山灰層、今田?、岡郷(0.57±0.09Ma)、桧谷、国近、保田、市ケ原火山灰層と命名されています。なかでも年代が測定されている楢原、岡郷火山灰層などは重要な「鍵層」になります。(Ma:100万年前)写真3,4

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写真3 「黒瀬盆地の第四系地質図」-東広島の自然誌ⅡP60より

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写真4 「黒瀬盆地の西条層」-東広島の自然誌ⅡP61より

以上の報告に加えて、「東広島の自然誌Ⅱ」の参考文献の「広島県呉市郷原町から見いだされた第四紀火山灰層について」(1996)から、「郷原火山灰」と命名された新たな火山灰層を紹介します。写真4

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写真5 論文表紙

拙宅西の“野呂山”―山すその民家に鯉のぼりの姿はありません―を越えたところ、黒瀬川左岸側の呉市郷原町隠地に分布しているそうです。写真6,7

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写真6 “野呂山” 2022.5.5 撮影

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写真7 P100 地図など

広島大学の鈴木盛久先生や寺岡明文氏*ほかの方々のこの論文には、郷原町の約20ヵ所の西条層の露頭調査で、わずか1ヵ所で火山灰の地層が見つかったそうです。その火山灰の鉱物組成やフィッション・トラック年代から0.56±0.12Ma (68万年~44万年前)の中期更新世のもので、既知の岡郷火山灰層や大阪層群の栂火山灰層(これらの給源地は中部九州の九重火山群付近で、そのテフラは南関東の房総地域まで分布:吉川ほか1991)と対比できる可能性が高いと結論付けられています。また、この調査で西条層から産出した大型植物化石や花粉分析から、堆積当時の古環境は寒冷な気候だったと結論付けられていて、遠い過去の様子が再現できます。

これらの文献などから、多くの火山灰層が私たちの身近にあることが分かります。
5月4日、以前(10年以上前)のコウホネ観察会で見つけて気になっていた黒瀬町小多田の保田古墳の近くの火山灰層-たぶん保田火山灰層-を探しに行きました。
残念ながら、草木に覆われ、記憶の中の明瞭な火山灰層は見つけられませんでした。
西条層でしょうか、近くに泥層(シルト?)と小さい礫の混じった砂層がほんの少し露出していました。写真8,9,10,11

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写真8 保田古墳 

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写真9 保田古墳

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写真10 保田古墳

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写真11 西条層?

帰路、この地域の田植はおおかたが済み、苗を保護するため適度に湛水され、さわやかな風が幼苗を揺らしていました。

以下、参考文献として、Y会員ほかの「地域素材を活用した地学の学習(1)」が掲載されている紀要や昆虫化石の論文のアドレスを貼り付けました。
*呉市青少年指導センター

参考:東広島の自然誌
  :学習会「サイジョウコウホネを知る」に参加して
  :ブログ/2014-12-28(保田古墳)
  :ブログ/2020-12-11(寺岡明文さん)
  :AA11618725_55_1.pdf (hiroshima-u.ac.jp)(広島大学大学院教育学研究科紀要)
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/list/HU_journals/AA11618725/--/55/item/18301
  :2014092922827_10.pdf (mizunami.lg.jp)(西条層の昆虫化石)
https://www.city.mizunami.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/291/2014092922827_10.pdf



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