自然に親しみ、観て触れて学びながら、自然を守ろう

吉備路をたずねて

平成19年度生涯学習エコバスツアーを企画・案内して

沖村 雄二

 岡山県吉備地方は、名所旧跡の多い古い歴史の里で、観光客が絶えない一方、地質学的にも考古学的にも重要なところが少なくない。こうもり塚につ使われている浪形石は、ここから直線距離で約23km西、井原市と矢掛町の境界地域に分布する天然記念物“浪形岩”由来の岩石であり、古墳時代の巨石の運搬技術に驚かされる遺跡でもある。また、弥生時代の墳丘墓とされる楯築遺跡は、巨石を配列した謎の多い国指定の史跡である。

 国の名勝「豪渓」は大正12年3月に指定され、紅葉の名所として知られるとともに、花崗岩の節理の発達と風化作用が絶妙な地形をつくりだしていることでも有名である。

 以上、自然研究会会員の生涯学習にふさわしい内容であると考えて企画したもので、吉備観光協会ボランティアガイドの会、池上宣雄顧問に案内・指導をお願いし、多大な便宜をいただくとともに、有益なお話をいただいたことに深く感謝したい。

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19年エコバス記念.jpg

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備中国分寺跡にて

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こうもり塚古墳 石室内

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楯築遺跡にて


吉備路をたずねて

的 美里



 晴れ渡る初冬の一日、吉備路へのバスツアーに参加させていただいた。テレビや写真では見ている備中国分寺の五重塔を実際に行って見たいと前から思っていた。その機会を得て朝早い集合にも心弾んでいた。

 「サンロード吉備路」に到着すると地元のボランティアガイドの会長さんが今日の案内をして下さることになっており、先ず備中国分寺を訪ねた。

 遠くから眺めながら近づき、塔の周りをぐるりと歩いて近々と見た。この塔は最近修復されたようだが、どこにもその痕跡は見当たらず、全体に歳月を経た自然の木肌の落ち着きが感じられた。五重塔には心柱が貫いており、建てる時、心柱を二十センチ程浮かせておき、長い年月のうちに落ち着いてくるのだと伺い、塔の構造の不思議を知ってもう一度見上げてみた。大切に守り受け継いで来られて、今こうして出会えたことを貴重に思えた。

 今年の紅葉は少し遅れているようだが、豪渓の紅葉は今が身頃で素晴らしかった。紅葉とそそり立つ岩との調和は絵を見てるようで、絶壁、奇岩は壮観であった。

この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉
            三橋 鷹女

 紅葉をじっと見ていると、ふと鷹女の有名な句が思い出された。

 雪舟で名高い井山宝福寺の紅葉もまた美事であった。境内に頼山陽の石碑があり、滑らかで板のようなその石が粘板岩であることを沖村先生が説明してくださった。緻密な黒っぽい石で、碑文は読めなかったが、石の名を知ることができた。

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紅葉の宝福寺

 限られた時間に吉備路の古墳や史蹟をたくさん訪ねることができたが、吉備路はどこを歩いても古代の香りが漂っている。またいつかゆっくり訪れてみたい所であった。


豪渓を訪ねて

森山 宏一


生涯学習エコバスツアー午後のハイライトは国指定名勝地「豪渓」です。今年一番の寒気が流れ込み、強い北風で青空を雲が次々と流れてゆきます。

 国民宿舎サンロード吉備路で昼食を済ませ、沖村先生や観光ガイドの池上さんからの説明を受けながら、バスは高梁川の支流槙谷川にそって県道57号線を北上します。

 県道は工事で車両通行止めの上、紅葉の観光シーズンとあって、渋滞は避けがたいものと予測されていました。しかし事前に、ご当地の観光課と連携いただいていたからでしょうか、ガードマンの先導をうけてバスは無事予定時刻に駐車場に着くことができました。

 紅葉の見頃がいつになるか、早くから予測するのは難しいことです。この企画計画の段階で、時期を何度も検討し、変更もされたとのことでした。豪渓に近づくにつれて紅葉は徐々に進み、駐車場に着いたころ、あたりの紅葉はまさに見ごろを迎えていました。

 豪渓の見どころは、何といっても両岸に迫る花崗岩の岩壁や岩峯と、今にも崩落しそうな予感を与える柱状節理のすごさにあります。

 節理とは岩石に見られる割れ目のことです。火成岩の場合、岩体が冷えるときの収縮が原因で生じるとされています。割れ方に規則性があり、生じた岩石ブロックの形に特徴が出ます。

 ここ豪渓のような花崗岩の場合には直方体のブロックとなり、玄武岩の場合には六角形の板状のブロックとなります。それが整然と積み重なって柱状となります(柱状節理)。

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豪渓の聳立奇岩

 岩石の風化にはさまざまな原因がありますが、その一例として、割れ目に入った水が凍る場合があります。水は氷になると体積が増えますので、割れ目は押し拡げられ、崩壊は著しく進みます。
 
 豪渓でも崩落事故があり、数年前から車両を通行止めにして、県道の工事が進められています。割れ目にセメント(?)を注入し、ワイヤーのネットを設置することで、岩石の落下を防ごうとするものです。天を衝くような岩壁の最上部に足場のテントが見えました。工事が無事に済みますようにと願うばかりです。

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豪渓にて 工事模様

 その足場から見下ろした深い渓谷、崩落現場、洪水時の濁流などを想像して、槙谷川の侵食の激しさを実感しました。

 稀にみる紅葉の渓谷美を堪能し、大いにリフレッシュしました。お世話になった皆さんに厚く御礼申し上げます。

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宝福寺“粘板岩” ガイドは池上宣雄さん

東広島の自然(2008.12)No.40 掲載

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