自然に親しみ、観て触れて学びながら、自然を守ろう

学習会「サイジョウコウホネを知る」に参加して

学習会「サイジョウコウホネを知る」に参加して

平山敏枝


 この学習会は、サイジョウコウホネについて基礎的な知識を学びながら、自生地の環境や生育状態を観察し、自然研の会員として、市民の問いにも的確に答えられるだけの知識を身に付けるべく企画された。

 6月7日、好天の午前9時 広大理学部玄関前に集合。参加者11名。
① 広大生態実験園
ここでコウホネ、サイジョウコウホネ、ベニオグラコウホネの花、菓、茎などを間近に見比べながら、共通点、相違点、由来等の説明を聞く。

 西条盆地固有種であるサイジョウコウホネは、コウホネとベニオグラコウホネの自然交配種で、その中間的な形質を持っている。 主な特徴は、下表。

 この実験園だからこそ、手に取って見ることが出来るが、ため池などでは岸から離れて生育していることが多いので、遠目に見るだけとなる。

② 次に交番裏の池へ
ベニオグラコウホネを観察。 ここはベニオグラコウホネとジュンサイとヒシ(今は葉のみ)の競演だ。 ジュンサイの赤い小さな花と、展開した切れ込みのない丸い葉を初めて見た。(私は、展開前のゼリー状のモノに包まれ巻いた葉、つまり食用の、しか知らなかった・・・)

③ 寺家・中の峠
田んぼの中の広い道路を車で走った後、舗装されていない林の中の小道をゆるゆると進む。ここは旧山陽道だそうだ。中の峠の池に出ると、何と多くの釣り客が。釣り人のいない、池の西の方に歩いて行くと、一転、新緑の木々と水に映る影、水面に浮かぶサイジョウコウホネの息を呑むような美しさ! 静寂と、時おり聞える鳥のさえずり。

④ 医療センター近くの宮脇大池へ
かつて、サイジョウコウホネとアシが共存していた池は今、アシの群落のみ。
これは道路工事の為、池の水を落し、冬季池の底に露出した根茎は、凍結を繰り返した未、枯死してしまったそうだ。以前、水の無い池の底に横たわる白いホネ(!)を目撃した私は??? 春になって、水を張っても何も出て来ない池を見て、とても残念でたまらなかった。疑問は一つ解けたが、無念は大きくなるばかりだ。 サイジョウコウホネといえば、この池のものが最も良く知られていたのに・・・
「コウホネ」の名の由来
地下茎が太くて白く、背骨よう。踏むとポキポキ音がするとか。河骨と書く。

⑤ 八本松教育センター近くの池へ
ここではコウホネとハスとガマが所狭しと、しかしお互い分をわきまえてか、勢力争いすることもなく、長い間平和に共存している。コウホネは抽水葉が大きく、花が葉の下に咲くので、群生していると大きな葉だけしか見えない。

 西条盆地にはサイジョウコウホネという固有種があり、また多種類のコウホネ属の生育地として全国的にも貴重な存在である。コウホネ属をはじめ多種多様な生物を育み、後世に残す役割をもつため池の自然を、大切に守って行きたい。

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サイジョウコウホネを知る

田中 繁

 平成21年6月7日(日)
 広島大学の決められた場所に9時に集合することになっていたのですが、遅刻してしまい、同行の皆さんにご迷惑をかけてしまいました。勝手知った構内と思って歩きましたが、うろうろしているまに時間がたってしまったわけです。

 はじめに、大学構内の生態実験園に行き、実物の生態を見ながら、コウホネについての解説を聞きました。私はコウホネの知識があまりないので、大変感動しました。

 次に、大学そばの交差点にある交番の裏の池でベニオグラコウホネを観察しました。

 次は寺家の中の峠に行き、サイジョウコウホネを観察しました。

 次は、東広島医療センターの近くの池に行きましたが、ここでは残念ながら絶滅してしまっていました。そして最後に八本松教育センター近くの池でコウホネを観察しました。

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 今回の学習会は大変楽しく、またコウホネに関する知識を得ることができて、本当によかったと思います。


 2003年3月に黒瀬町で「黒瀬のため池と生物」という書物が出版されました。そこで私も以前からサイジョウコウホネを見たいと思っていたものですから、早速、黒瀬町役場に行き、2枚の地形図を購入しました。そして、池と思われる場所に青で色づけして、その数を数えてみたら、なんと183箇所もありました。

 よし、全部の池を調べようと思い立ち、一人で毎日のように調査に出かけ、夏中ずっとがんばり続けました。そして8月31日までに114箇所を調査し、それをまとめてみました。

 調査中、感じたことを述べてみますと、初めての池の表面をのぞくときのわくわくした気持ち、それはそこに何があるかという期待感でいっぱいでした。ですからコウホネが見つかったときには、暑さも忘れて思わず興奮したものです。さらに、他の周辺がきれいに整備されているところと、周辺が荒れていてちかづけないところもたくさんありました。

 一番悔しかったのは、池の向こう側のほうにコウホネがあってもそこに近づけず、双眼鏡で見たりしたことです。ゴムボートでもあればよかったと思っています。

 さて、調査の結果、コウホネが見つかった池は15箇所で、その多くは人がちかづけないようなところでした。そして、コウホネの分布している池はそのほとんどが黒瀬川の南東がわに位置する池であり、北西側には少ないことがわかりました。でも、大多田の明治池にはコウホネらしき植物が遠方に見えます。しかし、個人宅の庭を通らないと近寄れません。

 2009年にごく一部の池ですが、前回の調査のときにコウホネが生育していた池で、すでに消滅してしまっているところもありました。また、新しく道路が作られたため、池がなくなっているところもありました。残念です。6月28日に伊保山近くの池を調査していたところ、周辺の田んぼの持ち主の女性が「何をしているのか」とたずねられたので、「コウホネをさがしている」というと、「うちの田んぼのへりの池にある」といわれて、案内してもらって田んぼの隣の池の水面を見ると、二つの小さな他に、ベニオグラコウホネらしい花が咲いているのがわかりました。写真は花だけを採取して撮影したものです。これからもずっと調査を続けたいと思います。

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● 事務局より 資料のお礼
青山先生、塩路先生からこの行事のためにA4版16ページの本格的な資料を作成・配布していただきました。ありがとうございました。
・・参考までに以下はその表紙を転載します。
(土岡)

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東広島の自然(2010.3)No.41 掲載

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