自然に親しみ、観て触れて学びながら、自然を守ろう

西原川生き物救出大作戦(移植・移動)

西原川生き物救出大作戦(移植・移動)

東広島市自然研究会 会長  土岡 健太


 御承知のとおり、平成22年度は創立20周年という本会にとって重要な年であった。20年という長い歩みをふまえ、これからどのような方向を目指すのか?文字通り、大きな節目にさしかかったようである。

 会員各位が会則にある会設立の目的(後記)をもう一度読み返されたいと思う。

 私は前会長の沖村先生に惹かれて入会させてもらった次第で、先生をお手伝いできることがあればと、また、自分の勉強になろうと考えて、今まで7年間ご一緒させてもらってきた。現在、それらの成果は自分にとって余りあるほどのものになっていて、大変感謝している。

 3年前、先生が「この任期で、4年間務めた会長職を辞する」と表明された。そのとき「先生が辞められたら、私も役員を下りよう!」と決めていた。しかしながら、以来、役員会は次期会長の人選などで1年半の間、何度も暗礁に乗り上げてしまった。そんな不透明な状況の中で、沖村先生に会長職をもう一期2年間延長して引き受けていただくよう、無理なお願いをした。そのいきさつは、会報40号の編集後記に書かれている。再度読んでほしいものである。

 その時点で、先生は20周年記念行事の内容を考えておられた「何をしましょうか?」と相談を受けたことがあった。「式典の様なものも必要ですし、展示物は自然誌Ⅰ~Ⅲ号の内容を中心に発表しましょう」と方針が決まり、動き出したわけであるが、準備に掛らなければならないとき事務局長であった私は、家庭の事情でまったくお手伝いができなかった。そのため、関係諸団体との話し合い、会場の下見から会場使用の交渉、30枚以上のB1ポスターパネルの作成や展示標本、書籍の用意、人員の配置まで、ありとあらゆることすべてを先生が一人で用意されることになった。

 また、この年は役員改選にあたり、再度次期会長さん探しが始まったのである。結果として、役員をおりるつもりの私が引き受けさせていただき、会則の変更(副会長2名→副会長若干名)を承認していただいた。自然研にとって呉市から「借りてきた猫」のような会長であろうが、しばらくの間、会長職を預かろうと思っている。

 さて、前述の会則(会報38号を参照)第2条の(目的)の中に「この会は、東広島市およびその周辺地域の自然を科学的に調査・研究し、その保護と活用・啓発に努め、人間と自然の調和がとれた、未来にはばたく国際学術研究都市の実現に資すること」と明記されている。周辺地域から借りてきた猫の目的が決まったのである。


西原川へ

 さっそく、中国新聞の記事(下)からその模索が始まった。昨年の秋、この記事を読み、福永会員とともに豊栄町乃美にある西原川の生物調査の申し入れを高沖 弘氏(乃美エコクラブ代表)にお願いした。

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2010.10.14付 中国新聞朝刊.jpg

 この川には、私が数十年前に遊んだ懐かしさがそのまま残っているようだった。「小鮒釣りし、かの川」である。ちょっと見でも、大変多くの生物が生息しているだろうと予想された。

 もちろん、先方からは調査・協力の快諾をいただいたわけであるが、同時に、とんでもない状況を知らされた。「この川は数カ月後、圃場整備の関係から現況が大きく変わります」と言われ、いきなり、調査どころではなくなったのである。さて、これからが大変であった。工事予定などの情報収集とその対応に追われた。

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西原川(2010.6).jpg
河川改修工事前の西原川 2010.6

大雪の日 オグラコウホネの移植.jpg
大雪の日 オグラコウホネの移植

オグラコウホネ(2010.8.jpg
オグラコウホネ(2010.8.)

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酷寒の日 動物の移動

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分類中

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多くのドブガイ

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ドブガイ

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ヤゴ類

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キイロサナエのヤゴ

葉上で縄張りを張るキイロサナエ ♂(2010.8).jpg
葉上で縄張りを張るキイロサナエ ♂(2010.8)

タベサナエ幼虫(ヤゴ.jpg
タベサナエ幼虫(ヤゴ)

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タベサナエ(♀)

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オオコオイムシ

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ドンコ

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工事中の用水路


西原川生き物救出大作戦(移植・移動)を終えて

土岡 健太

 工事が相当に進捗している今、この西原川に棲んでいた多少の生き物の救出はできたが、自然研の有志が動物・植物の移動・移植というボランティア作業を通して、会則にも謳われている「保護」という具体的な体験ができたものと思う。この貴重な体験は今後に生かしたい。さらに、大雪、酷寒時の作業であったにもかかわらず、終了後の気持は実にすがすがしく、爽やかなものであったことを付しておきたい。

 実は、この爽やかさをできるだけ多くの会員さんに実感していただきたいと思い、このような生き物に関してのボランティアを希望される方を募集したい。

 ボランティアリストを作成します。会長あて連絡ください。また、西原川の詳細については工事前に生物調査をされ、具体的な保護計画を立てられ、現在も工事の中心になって動かれている水土里みどりネットひろしまの秋山浩三氏に講演していただく機会を持ちたいと考えている。今回のボランティア活動の詳細は次号の会報に掲載したい。

 追記:今回ボランティア参加者は5回、延19名であった。移動・移植した生き物は20種以上、572個体以上あった。参加者に感謝します。

西原川に生息する生き物・植物 (確認、同定できたもののみ、2008~2011.2)
<トンボ類>キイトトンボ、アジアイトトンボ、オオイトトンボ、ホソミオツネントンボ、ハグロトンボ、
■キイロサナエ、タベサナエ、コオニヤンマ(幼虫)、オニヤンマ(幼 虫)、シオカラトンボ、ショウジョウトンボ、コシアキトンボ、 ウスバキトンボ、マユタテアカネ、ギンヤンマ、コシボソヤンマ(幼虫)
<水生昆虫>タイコウチ、ミズカマキリ、ゲンゴロウの仲間、■オオコオイムシ、ガムシの仲間
<貝類>■マルタニシ、カワニナ、■ドブガイ、タイワンシジミ(帰化種)
<魚類>ドジョウ、■ドンコ、■メダカ、ギンブナ<両生類>■イモリ
<その他>アメリカザリガニ(帰化種)、エビの仲間
<植物>■オグラコウホネ    ■~準絶滅危惧種以上の種
「2011年 西原川生き物救出大作戦(移植・移動)」
・救出・移動リスト(1/29,2/6分のみ):19種 472個体
ドンコ:67 ドジョウ:13 メダカ:149 ギンブナ:1 アカハライモリ:1
オオコオイムシ:7 クロゲンゴロウムシ:1 ミズカマキリ:5 ガガンボ:1 コミズムシ:1
カワニナ:15 サカマキガイ:5 タニシ:1 ドブガイ:128
オニヤンマ:3 シオカラトンボ:1 タベサナエ:44 コシボソヤンマ:14 キイロサナエ:15
・移動先:西原川上部の水路、指定のため池 ・参加者は5回、総計延19人
ドブガイ

資料提供 福永みちる(会員)

東広島の自然(2011.3)No.42 掲載

東広島の自然(2012.3)No.43  掲載

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