『仙酔島の自然観察と鞆の浦の歴史散策』に参加して
『仙酔島の自然観察と鞆の浦の歴史散策』に参加して
道野 忠司
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平成22年11月21日(日)のエコバスツアーは、朝から快晴でした。東広島市の市役所を8時26分出発し、一路鞆の浦を目指して山陽自動車道へ。
バスの中で、早速船越さんからヒサカキ科の三種類の植物について教えていただきました。神社で玉串として使うもの、サカキに似て葉が密生しているため好んで庭の垣根に使われるハマヒサカキ、自生している場所によりずいぶん生体が異なるヒサカキの三種類です。新鮮な枝を見較べることにより、特徴が掴め、実家近くの山でよく見かけていたのはヒサカキだったことが分かりました。
鞆の浦の仙酔島渡船場に到着すると、目前に広がる空、海の青さに島の緑、崖の褐色が映え、まるで箱庭の様でした。
平成いろは丸に乗り込み、波しぶきと心地よい風を受け5分程で対岸の仙酔島に到着。島の岩石については沖村顧問、植物については堀越さんより、楽しく分かり易いお話しをしていただきました。
全島の殆どが流紋岩質火砕岩でできており、崖は風化が著しいのですが、火砕流でできた溶結凝灰岩(高温の軽石・岩屑が堆積することにより自重で気泡が潰され扁平状になっていることが特徴)が観察できました。また、角礫凝灰岩など様々な様相を見せており、貫入している安山岩質岩脈もあり、「五色岩」では赤色、茶色は鉄分、黒色はマンガン等の鉱物起源と色とりどりでした。その他断層や断層破砕帯もあり、狭い範囲で岩石の面つきをたくさん観察できました。
島にはウバメカシがたくさんみられ、海岸の波しぶきを受ける近さの岩場に自生しています。土も殆どない場所に、なぜ自生できるのでしょうか?その答えは岩の割れ目から毛細管現象で水が上がり、それを糧として脈々と逞しく生きているそうです。
ここでもう一つウバメカシについて学びました。ウバメカシのどんぐりは、二年周期で実を付けるそうです。一年目は花が咲き受粉して緑のどんぐりに成長。二年目は、クリの実で例えると、かねつきの状態(栗色)になり成熟します。
私のウバメカシについての知識は備長炭の原料や庭木に使用される程度だったので、目からうろこが落ちる思いでした。
島の遊歩道を展望台方面に登りつめていくと、道端にブルーベリーの実に似たムニンシャシャンボの実がありました。実家近くの山にも、よく似た実をつけるカンスイチゴがありますが、島にも同じ実に似た植物があるとは思いもよりませんでした。実はブルーベリーに似て酸味が少なく、ほんのり甘い果実です。ドライフルーツ・ジャム・スィーツ等に適しているかもしれません。
後日、調べてみるとシャシャンボ(小小坊と言い小さな丸い果実の意味)別名シャセンボと言いツツジ科のスノ木属の常緑小高木で、ブルーベリーと同属と書かれていたので納得しました。
頂上近くの展望付近ではウラジロが灌木の下にたくさん繁茂しています。正月のしめ縄の飾りとして使われているシダ科の植物です。年ごとに枝分かれし伸びていくため“代々続く”と言われます。更に、葉の裏が白いため“共に白髪まで”と、縁起を担ぐ風習に大変都合が良く、見た目にも日本伝統の美意識に合ったのでしょう。
鞆に戻り、江戸時代に朝鮮通信使の立寄り先であった対岸の福禅寺対潮楼に。
ここの石垣にイワベンケイ科のツメレンゲが一株自生しています。石の間のいきいきしたその姿は、神々しくも思えます。
対潮楼からの窓越しの弁天島、仙酔島の切り立った崖、黒松、白い波、青い海、青い空の美しい景色は、その昔、朝鮮通信使が「日東第一形勝」(日本一)と言われたように、旅の疲れを癒す絶景です。行きかう船は往時とは違いますが、風情は今も昔も変わらないのではと、遥か昔を思い浮かべました。
鞆の浦の古の姿を残す街並みは、日本古来の良さを醸し出しています。先人の英知で、防蟻用として幾年も潮に晒された舟板を使った土塀の風景。
この街並みの中に、福山藩を代表する特産品であった薬酒の本家本元の保命酒があると聞きました。残念ながら養命酒のほうが、いち早く薬事法の許可を取り有名になったそうです。お土産に保命酒を買って帰り、結構美味しく家内と飲み、疲れが取れました。鞆に行く機会がありましたら、また買うつもりです。
帰り際、鞆の浦に江戸時代から残る雁木(船着場の石段)でみなさんと一休み。今もツアーが無事成功し、安堵された土岡会長の微笑まれた姿が目に浮かびます。
鞆の浦の名の由来は、古事記の中で第15代仲哀天皇の神功皇后が新羅討伐の際に、この地に立ち寄り、渡守の神に弓の武具『高鞆』を奉納したことが始まりだそうです。昨今、鞆の浦湾の高架橋について賛否両論がありますが、この歴史ある風情を後世になんとか引き継いでいただけるように願ってやみません。
仙酔島と鞆の浦のツアーに参加し、新しい発見がたくさんあり、とても楽しい一日でした。企画、実行、説明された皆様に、心より感謝申し上げます。
東広島の自然(2012.3)No.43 掲載