里山のたからもの
里山のたからもの
東広島市自然研究会 会長 土岡 健太
画像をクリックすると拡大します。
■里山のたからもの~オオサンショウウオ~
2011年度より、私達は東広島市教育委員会の許可を得て、国の特別天然記念物であるオオサンショウウオの生息調査を開始した。
調査区域は、東広島市豊栄町清武後谷、同町清武向谷地区を流れる椋梨川の上流部、距離約3400mとした。
以前より、当地区内にオオサンショウウオが生息していることは知られていたし、その実態調査も地元有志が行ってきた。しかし、それらの情報は広く知られることはなく、過去の調査資料の詳細も不明である。
それで、現在の状況はどうなのかを、地元団体、広島大学総合博物館、広島大学大学院生諸君、広島大学いきもの会、東広島市教育委員会と連携・協働しながら、広島市安佐動物公園の指導のもとに生息分布調査を始めた。
2011年8月に第1回調査(調査は通常午後8時~)を開始して、現在までに、大きな成果と重要な発見があった。
それは、この短期間で成体19頭(重複可能性あり)、幼生(赤ちゃん)10頭、さらに産卵巣穴も確認・記録することができた。それにより、椋梨川上流部は彼らの生息地であり、繁殖地でもあるということが学術的に初めて認められた。
しかし、現在の彼らの生育環境は大変厳しいものであり、生存・存続のレベルとしては最低限の状況であろうと思える。私達は「ここのオオサンショウウオを絶滅させてはならない」と、その実態解明に努力し、その成果は機会あるごとに各方面に公表してきた。
2012年度は広島大学の「地域連携推進事業」プロジェクトに採択され、より正確な生息分布調査を継続している。
ここでは、彼らのありようや調査のごく一部を紹介する。「オオサンショウウオの生息を何としても守りたい」私達の気持を感じていただけたらと思う。
■オオサンショウウオとは
オオサンショウウオは世界最大の両生類で、世界に2属3種(オオサンショウウオ、チュウゴクオオサンショウウオ、アメリカオオサンショウウオ)しか存在しない。
生涯のほとんどを川の中で暮らす変わった生き物である。約2300万年前の化石(ヨーロッパ産出)とその骨格が良く似ていて、「生きている化石」と言われている。
日本での分布は西日本に限られ、おもに中国地方の山間部に生息しているが、東広島市内では「里山」といわれる地域にも生息しており、地域の人にとってなじみ深い生き物である。
昭和26年に国の天然記念物、翌年には国特別天然記念物に指定された。日本が世界に誇る大変貴重で重要な生き物―日本固有種―である。「生きた国宝」、「里山のたからもの」と評されるゆえんである。
オオサンショウウオの生態については、昭和46年開園と同時に始まった安佐動物公園での調査・研究・飼育下の観察から、大変多くのことが分かってきたが、今なお、彼らの実態は不明な部分が多いと言われる。