龍王山のカメムシ類
龍王山のカメムシ類
福永みちる
カメムシといえば、不快なにおいを出す嫌われ者のイメージが強く、また農作物や樹木などの汁を吸い加害するものが多いのも事実です(サシガメなど、他の小昆虫を捕食して生きるものもいます)。
カメムシの出す不快なにおいは、体の「臭線」と呼ばれる場所から出されています。このにおいは捕食者(鳥など)から身を守るために働いているだけでなく、集団生活をしているカメムシ類では仲間へ危険を知らせる警戒フェロモンとして作用しています。人にとってはいやなにおいも彼らなりの生きるすべのひとつであり、多様な形や生態などに多少でも興味を持っていただければ嬉しく思います。
龍王山では31種のカメムシ類を確認しています。東広島市全体では、現在までおよそ170種記録されていますので、龍王山では1/6強を確認できていることになります。
[カスミカメムシ科]
メンガタカスミカメ
体長 7~8mm
時期 5~10月
カメムシの仲間で「カスミカメムシ」と呼ばれるグループの一種。散策道わきの植物上などにとまっているのを見られる。
[サシガメ科]
ヨコヅナサシガメ
体長 16~24mm
時期 4~10月
サクラやエノキの樹幹でよく見られる。冬季にもサクラの樹幹の窪みで幼虫が集団になって越冬するのが見られる。幼虫は5月初めに脱皮して成虫になる。
オオトビサシガメ
体長 20~27mm
時期 4~11月
大型のサシガメ。樹上で暮らし、小昆虫を捕えて体液を吸う。成虫は樹皮の下や樹洞で集団越冬する。
ヒゲナガサシガメ
体長 15mm前後
触角が非常に長いのが特徴。山地の樹上に生息するが、あまり多くないとされている。龍王山では2011年、2014年のそれぞれ8月に見ている。
シマサシガメ
体長 13~16mm
時期 4~9月
他の小昆虫を捕えて体液を吸う。散策道わきの植物上で見られることが多い。脚が白と黒の縞模様になる。
ヤニサシガメ
体長 12~16mm
時期 5~10月
体はマツ脂状の粘着物でおおわれる。マツの樹上で生活し、小昆虫を捕えて食べる。
[ナガカメムシ科]
ムラサキナガカメムシ
全長 5mm前後
背面に白いY字型の隆起がある。散策道周辺の草むらで見られる。写真は、冬季に散策道沿いの看板にとまっていたもの。
オオモンシロナガカメムシ
体長 10~13mm
時期 4~11月
林床を歩き回り、落下した木の実の汁を吸う。灯火にも集まる。写真の個体は、白幕に照明を当てて飛来したもの。
[オオホシカメムシ科]
オオホシカメムシ
体長 15~19mm
時期 4~11月
よく似たヒメホシカメムシより大型で、体も細長い。龍王山ではアカメガシワの花に来ているのをよく見かける。
ヒメホシカメムシ
体長 10~13mm
時期 4~11月
花や樹木の実などに集まる。オオホシカメムシに比べやや体が丸みを帯びる。
[ヘリカメムシ科]
ホシハラビロヘリカメムシ
体長 13~16mm
時期 4~11月
翅に1対の小黒点がある。胸部の先端両側は少し尖る。マメ科植物につき、クズでよく見られる。東広島市内でも普通に見られる。
オオクモヘリカメムシ
体長 17~22mm
時期 4~11月
大型のカメムシで、胸部の先端両側は尖る。ネムの木につき、散策道沿いのネムの木で複数の個体が見られる。
キバラヘリカメムシ
体長 11~17mm
時期 4~11月
名前のように、腹部が黄色い。ニシキギ、マユミなどにつく。
ハリカメムシ
体長 10~12mm
時期 4~11月
イネ科、タデ科植物につく。よく似たホソハリカメムシはもっと体が細い。
[ホソヘリカメムシ科]
ホソヘリカメムシ
体長 14~17mm
時期 4~11月
クズなどのマメ科植物につくカメムシで、エンドウ、インゲンなども食害するため、畑などでもよく見られる。龍王山では散策道周辺の草むらなどでよく見られる。
[ヒメヘリカメムシ科]
ケブカヒメヘリカメムシ
体長 6~8mm
時期 4~11月
ヒメヘリカメムシ科はよく似ているが、本種は腹部両端の白黒の縞模様が目立つ。散策道わきの葉上や周辺の草むらで見られる。
[クヌギカメムシ科]
クヌギカメムシの一種
体長 12mm前後
時期 6~12月
クヌギカメムシとヘラクヌギカメムシという似た種がおり、腹部の形状が違う。写真のみでは判定できないため、クヌギカメムシの一種とした。
[キンカメムシ科]
アカスジキンカメムシ
体長 16~20mm
時期 5~11月
散策道わきの葉上で見られるが、多くは見かけない。体には独特の金属光沢を持ち、キンカメムシ科の美麗種といわれている。幼虫も11月に葉上などで見ている。
[カメムシ科]
エビイロカメムシ
体長 14~19mm
時期 5~10月
ススキなどのイネ科植物につき、林縁や草むらなどでよく見られる。幼虫も扁平な形で、同様によく見られる。
クサギカメムシ
体長 13~18mm
時期 4~11月
クワ、クサギなどにつくといわれ、林縁や草むらなどでよく見られる。冬季によく屋内に入ってくるが、そのにおいのため嫌われる。龍王山では朽ち木の中で成虫越冬している姿も観察した。
ナガメ
体長 7~10mm
時期 4~10月
イヌガラシ、クレソン、ダイコンなどのアブラナ科植物につく。写真は、キャンプ場奥の山肌の法面に群生する草木についていたもの。
ウシカメムシ
体長 8~9mm
時期 4~11月
前胸の両側が強く突出し、牛の角のように見える。近年、市内のあちこちで見るようになっている。龍王山では、中央広場の上のサクラの並木で見られた。
チャバネアオカメムシ
体長 10~12mm
時期 4~11月
体は光沢のある明るい緑色で、翅は茶色。サクラ、クワなど多くの植物につき、散策道わきの植物上などによく見られる。灯火にもよく飛来する。
ヨツボシカメムシ
体長 12~14mm
時期 6~9月
前胸の前縁に4つの小白紋があるが、目立たない。クズ、フジなどによくつく。
ミナミアオカメムシ
体長 12~16mm
体の模様には変異があり、写真は緑色・白色帯型の個体。よく似た種にアオクサカメムシがいるが、アオクサカメムシは全体が緑色で光沢がない。
ツヤアオカメムシ
体長 14~17mm
時期 4~11月
体は緑色で光沢がある。灯火に非常によく集まる。散策道わきの植物上などによく見られる。
トホシカメムシ
体長 16~23mm
時期 5~11月
体は黄褐色で、前胸の両側は強く前へ張り出す。大型種で見ごたえがある。山地性の種で、市内でもある程度標高のある山で見られるが、個体数は多くない。
シモフリクチブトカメムシ
体長 11~17mm
前胸の両側が張り出すが尖りは弱い。背中の白い紋が目立つ。蛾などの鱗翅目の幼虫を襲って体液を吸う。
[ツノカメムシ科]
ベニモンツノカメムシ
体長 10~12mm
時期 4~12月
背面の大部分が赤く、前胸両側の尖りは弱い。セリ科植物につくと言われ、公園内では散策道わきの葉上で見られた。
エサキモンキツノカメムシ
体長 11~13mm
時期 4~11月
背中にハート模様がある。ミズキ、サンショウなどにつく。市内全般で個体数は多く、龍王山でも散策道わきの植物上でよく見られる。成虫で越冬し、落ち葉の下で越冬する個体を見ている。
モンキツノカメムシ
体長 11~14mm
時期 5~10月
エサキモンキツノカメムシに似ているが、背中の模様はハート模様にならず、色も黄色がかる。散策道わきの植物上などに見られる。
完