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豊栄町清武・乃美の椋梨川・三篠川で見られた生き物たち

みんなの広場

豊栄町清武・乃美の椋梨川・三篠川で見られた生き物たち

福永みちる

 2011 年夏から始まった椋梨川でのオオサンショウウオ調査に並行して、その後三篠川でも調査が行われています。オオサンショウウオを探す際には、ほかのいろいろな生き物が見つかり、川の中でオオサンショウウオを探すメンバーが網ですくいあげたものを陸の上からアシストする私たちは撮影しています。今回はそれらをすべてとはいきませんが、一部紹介したいと思います。
 両河川の生態系はオオサンショウウオを頂点として形成されていると考えられます。生態系のバランスを保つには多くの種の生き物が生息することが大切と言われており、オオサンショウウオがこれまで生き続けてこられたことを考えると、椋梨川、三篠川には生態系の底辺となる小さな生き物たちが多く生息しているのだと思います。しかし、オオサンショウウオの生息にはこれらの食べ物ばかりではなく、さまざまな要素が必要で、それらがうまくいっていないことから、今まさに存続の危機に立たされているのです。
 川で見つかった生き物たちは種類も個体数もいろいろですが、なかでも、スッポンやウナギ、アブラボテは個人的にこれまで見たことがありませんでした。スッポンは小さな子どもと思われる個体も見つかりました。そして海で生まれるウナギがこのような内陸の川の奥まで遡ってきていることに驚きました。
 椋梨川では乃美地区で、2014 年6 月にアオハダトンボを確認しました。アオハダトンボは、広島県のレッドデータブックでも準絶滅危惧に選定されている希少なトンボで、生息地が局地的で、市内ではこれまで吉原地区の敷地川・吉原川でしか確認できていませんでした。福富町の小学校の教師だった古川一明氏が記した80 年前の記録には豊栄町乃美の地名がありましたが、それ以後記録がなく、今回、およそ80 年ぶりに確認されたことになりました。さらに、それから4 ヵ月後の10 月に、アオハダトンボが見られた同じ地点で、広島県で大きさ2 位となる巨大なオオサンショウウオ(通称“タカマツサン”)が発見されました。この事実に対し、アオハダトンボとオオサンショウウオが80 年もこの同じ川で生き続けてきたことに特別な思いがこみ上げ、心が震えるような思いがしました。そして、オオサンショウウオを絶やしてはいけないと改めて強く思いました。
 外来種のアメリカザリガニは、乃美地区を流れる圃場整備工事以前の西原川を調査した際多かったですが、今回のオオサンショウウオ調査で本流の椋梨川でも見つかりました。それほど数は多くはないようですが気になるところです。それから貝類のマシジミですが、移入されて在来種であるマシジミと交雑し、各地で大打撃を与えている外来種のタイワンシジミも混じっていないかと気になっています。
 調査では、写真の種のほかに、メダカ、ギギ、タカハヤ、カワムツ、トノサマガエル、ツチガエル、サワガニ、カワニナ、オニヤンマ(ヤゴ)、コオニヤンマ(ヤゴ)、コヤマトンボ(ヤゴ)、そしてさまざまなカワゲラ・トビケラ・カゲロウ・ガガンボなどの水生の幼虫が見つかっています。

参考図書
レッドデータブックひろしま改訂検討委員会「広島県の絶滅のおそれのある野生生物(第3 版)レッドデータブック2011」、広島県(2012)


椋梨川や三篠川で見つかった生き物たち(一部)

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スッポン(要注意種)
椋梨川の調査で、写真の個体と後に子どもの個体も見られた。

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ニホンイシガメ(準絶滅危惧)
日本固有種。甲羅の後ろ端はギザギザになる。椋梨川では数回確認している。写真は子どものイシガメ。

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アカハライモリ(準絶滅危惧)
日本固有種。全長8~13cm。腹は赤~オレンジ色で、不規則な黒色斑紋がある。都市周辺では減っている。

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アカザ(準絶滅危惧)
全長約10cm。顎には2 対のひげがある。おもに川の上流域の浮石環境に生息する。調査で数回確認できている。

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アブラボテ(準絶滅危惧)
生きた淡水二枚貝の鰓に産卵する習性があり、淡水二枚貝の減少で減っている。乃美地区の椋梨川で確認できた。

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白いコイ(と思われる)
調査時に一度だけ網に入ったもので大きな個体だった。放流?または人家の池などから逃げ出したものだろうか。

ヨシノボリの一種.png
ヨシノボリの一種
ヨシノボリの仲間は細かく分類されており、詳しい種名までは不明。川底に張り付くように静止する。

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ドンコ
調査時に必ず見つかる。小さなものから大型のものまで個体数も多い。

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ドジョウの一種
種名までは不明だが、よく見つかる。田んぼの脇の小さな川でもよく見つかる。

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ウナギ(ニホンウナギ)
2011 年、2012 年の同じ8 月に計2 回確認できた。

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アメリカザリガニ
外来種。調査時ときおり見つかるが、数はそれほど多くないように思われる。

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クロスジヘビトンボ(幼虫)
渓流周辺に生息する昆虫で、幼虫は山間の上流部の水中で生活する。成虫は大きな翅を持ち、陸上で暮らす。清武地区の椋梨川の上流部で見られた。

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コシボソヤンマ
木陰の多い川に生息する。夏の盛りには、水上を往復しながらメスを探すオスがよく見られる。メスは朽ち木などに産卵する。

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ムカシヤンマ(準絶滅危惧)
ヤゴは普通のトンボのヤゴのように水中ではなく、湿ったコケなどの中で成長する。調査地近くで羽化したものだろう。

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タベサナエ
春~初夏にかけて、ため池や小川などで見られる。市内では局地的。三篠川上流部の細い支流で見られた。

ニホンカワトンボ.png
ニホンカワトンボ
晩春~初夏にかけて、おもに川の中流域で見られる。椋梨川・三篠川とも見られる。上流部にはよく似たアサヒナカワトンボも生息する。

アオハダトンボ.png
アオハダトンボ(準絶滅危惧)
オスの翅は光を受けると藍色に輝く。初夏の川を彩る美しいトンボ。オスは水上を飛び回り縄張りを主張する。椋梨川で見られるが多くない。

※カテゴリー:広島県レッドデータブック

東広島の自然 NO.46 2015.3掲載

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