三江線と神楽
三江線と神楽
会員 新枝幹夫
JR三江線は広島県三次(みよし)市の三次駅と,島根県江津(ごうつ)市の江津駅を結ぶ延長108.1㎞の単線ローカル線です。沿線には35の駅があり,1両のディーゼルカーが走っています。
かつては,三江北線(江津~浜原)と,三江南線(三次~口羽)の二つの路線に分かれていましたが,昭和50年に浜原~口羽間が開通して,三次~江津間が繋がりました。大正15年から始まった工事は,半世紀を経て開通しました。
『江の川(ごうのかわ)』は山陽側から中国山地を刻んで日本海に注ぐ一級河川ですが,三江線のほとんどは,この川沿いを走っています。
広島県の香淀(こうよど)駅と島根県の宇都井(うづい)駅の間では,広島→島根→広島→島根と県境を3回越えます。
サクラの時季,紅葉の時季,あるいは江の川を渡る橋梁など絶景ポイントがたくさんあります。
(以上,『ゆっくり三江線三十五次みどころマップ』より要約引用)
三次から順に35の駅名をあげるとつぎのとおりです。
三次(みよし)→尾関山(おぜきやま)→粟屋(あわや)→長谷(ながたに)→船佐(ふなさ)→所木(ところぎ)→信木(のぶき)→式敷(しきじき)→香淀(こうよど)→作木口(さくぎぐち)→江平(ごうびら)→口羽(くちば)→伊賀和志(いかわし)→宇都井(うづい)→石見都賀(いわみつが)→石見松原(いわみまつばら)→潮(うしお)→沢谷(さわだに)→浜原(はまはら)→粕淵(かすぶち)→明塚(あかつか)→石見簗瀬(いわみやなぜ)→乙原(おんばら)→竹(たけ)→木路原(きろはら)→石見川本(いわみかわもと)→因原(いんばら)→鹿賀(しかが)→石見川越(いわみかわごえ)→田津(たづ)→川戸(かわど)→川平(かわひら)→千金(ちがね)→江津本町(ごうつほんまち)→江津(ごうつ)
(三次駅はJR芸備線の,江津駅はJR山陰本線の駅でもあります)
このうちディーゼルカー同士の行き違いが出来る交換駅は,式敷・口羽・浜原・石見川本駅です。
口羽駅と浜原駅には,昭和50年に建てられた『三江線全通記念碑』があります。
写真-1は三次駅で見た時刻表です。三次~江津間は1日に1便,途中の石見川本までが1便,浜原(三次から58.0㎞)までが2便,口羽までが1便でした(2013.7)。
写真-1 三次駅の時刻表
写真-2は江津駅で見た時刻表です。江津~三次間が1日に2便,中間の浜原(江津から50.1㎞)までが1日に3便でした(2013.7)。
ところで,三江線の各駅に,平成24年に神楽の看板が設置されたということを知り,平成25年7月に写真を撮りに行きました。神楽の看板は,ほとんどが駅名の標識の横に併設してありました。掲げてある神楽の演目の名称は,日頃慣れ親しんでいる芸北高田神楽において筆者がよく目にする名称以外のものも多数あり,石見神楽のジャンルの広さを改めて知りました。
駅のほとんどが切符の自動販売機もない小さな無人駅です(三次駅と江津駅だけは,神楽の看板を撮影するために,構内への入場券が必要でした)。
中でも,最も驚いたのが『宇都井(うづい)駅』です(島根県邑智郡邑南町)。6階層の階段棟があり,階段を116段登ると,高架橋の上に駅があります。まさに『天空の駅』と言うにふさわしい駅です。階段棟の各踊り場には,”あと〇段”と書かれていますが,そこには子供さんの字で心暖まるコメントが書いてあります。
■『あと106段』のところ
『ゴールはまだまだですよ~。三江線におくれないように,がんばってください。無理をしないように,休けいも入れて登ってください。』
■『あと86段』のところ
『まだまだですよ~。少し休みながら登ってください。三江線は三次と江津をはしっている一両電車ですよ。』
■『あと56段』のところ
『あと半分です。ここらで少しひと休みして登ってください。』
■『あと6段』のところ
『あと少しでゴールですよ!! がんばりましたね。すごいですね。まちあい室で休んでください。上からの風景はいいですよ!!』
これを読みながら登ったら,一気に楽しく上がれたような気がします。高さは地上20mで,日本一だそうです。
写真の掲載は三次駅から順に並べ,駅名に仮に番号をふっています。
ところどころに,悠々と流れる『江の川』やそこに架かる橋梁の写真も入れました。この中には立派な橋梁がいくつもありますが,筆者が印象深かったのはつぎの橋です。
■JR第二江川(ごうがわ)橋梁(1径間ワーレントラス橋)
島根県邑智郡美郷町にあります。橋脚がなく138mの長さです。橋脚がないワーレントラス橋としては長さ日本一だそうです。
■大浦橋(ニールセンローゼ橋)・大和大橋(アーチ橋)・高梨大橋(ファン型斜張橋)
島根県邑智郡美郷町には江の川に架かる道路橋として12の橋があります。中でもこの大浦橋・大和大橋・高梨大橋の美しい3橋が連続する場所は秀逸です。大浦橋(ニールセンローゼ橋)は平成5年度の島根県の景観賞を受賞しています。
■JR第一江川橋梁(3径間ワーレントラス橋・人道橋付き)
島根県邑智郡美郷町の粕淵駅付近にあります。人道橋が併設されていて江の川を歩いて渡ることができます。すぐ上流には道路橋の曙大橋があります。
■新江川橋(4径間連続ダブルデッキワーレントラス橋)
江津市の江の川の河口近くには,新江川橋(しんごうのかわばし,378.3m)があります。2層構造のトラス橋で,上を国道9号の江津バイパスが,下を市道が走っています。平成5年に土木学会田中賞を受賞した橋です。
〇JR第三江川(ごうがわ)橋梁(2径間ワーレントラス橋,243m)
〇JR第二江川(ごうがわ)橋梁(1径間ワーレントラス橋,138m)
15 石見都賀(いわみつが)・・・髪掛けの松(かみかけのまつ)
〇JR第一江川橋梁(3径間ワーレントラス橋・人道橋併設,216m)
24 竹(たけ)・・・鹿島(国譲り) (かしま・くにゆずり)
(昔は交換駅であったが,現在は片方の線路を撤去)
完