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続・龍王山の植物

続・龍王山の植物観察

青山幹男

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東広島市西条町の市街地の北部に位置する龍王山は標高が575mのなだらかな山で、南東部の斜面一帯は憩いの森として整備されています。

龍王や竜王の名前がついた山では昔から雨乞いの神事が行われていたそうで雨量が少ない瀬戸内沿岸部には多く存在します。

第二展望台になっている南端のピークには別名雨乞い神社と呼ばれる龍王社の史跡が残っています。昔はここで徹夜をして焚火をたいて雨乞いをしていたそうです。県内各所にも同名の山が多くあり、東広島市河内町にも文字違いで標高が556mの竜王山があります。

前号に続いて植物の紹介をします。観察の手引きとなるよう季節ごとに書いていますが、すべての植物を紹介することはできません。皆さん一人一人が図鑑で調べながら新しい発見をしてください。


春の植物観察

春になると待ちかねていたようにいろいろな草木が芽吹き花を咲かせます。それとともに虫たちも活動を始めます。初の陽気に誘われて憩いの森を散策しましょう。

春の野草の代表はスミレの仲間です。憩いの森では9種類のスミレを見ることができました。それぞれ生えている場所が違いますので環境の違いに注意しながら探してください。

管理事務所や芝生広場の周辺の日当たりが良い路傍や植え込みには紫色のスミレ(写真1)が多く見られ、時折白色に紫色の筋が入るアリアケスミレ(写真2)の花が見つかります。より乾燥したやせ地ではヒメスミレ(写真3)が小さな花を咲かせます。

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(写真1)スミレ

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(写真2)アリアケスミレ

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(写真3)ヒメスミレ

一方、自然度が高い散策路の林縁部ではニオイタチツボスミレ(写真4)、ナガバノタチツボスミレが多く、コスミレが1ヶ所で見つかりました。乾燥した尾根筋では赤紫色のシハイスミレ(写真5)が多く見られます。このスミレは紫背菫と書き、葉の裏が紫色になる特徴があります。

谷あいの湿った場所にはアオイスミレが3月初めに花を咲かせ、日当たりが良い湿地ではツボスミレ(写真6)が長期間花を咲かせます。スミレの仲間は、開花後に伸びる地上茎の有無で大きく分類されています。それぞれどちらのグループに入るのか観察してください。

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(写真4)ニオイタチツボスミレ

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(写真5)シハイスミレ

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(写真6)ツボスミレ

谷あいの散策路や流れの傍では、ショウジョウバカマ(写真7)、キランソウ(写真8)、ミツバツチグリ、ヘビイチゴ、ハハコグサ、ハコベ、ナズナ、ホトケノザ、タネツケバナなどの野草が花を咲かせています。

春の七草に詠われている植物は、栽培されているカブとダイコンの他はすべて昔から水田や畑の周りに生えている雑草たちです。七草の仏座は水田の畔に生えるコオニタビラコであり現在和名がついているホトケノザとは別の植物です。

キャンプ場や芝生広場などの人為的に作られた場所では、セイヨウタンポポ、シロツメクサ、コメツブツメクサ、オオイヌノフグリ、オランダミミナグサ、オニノゲシ、ヒメスイバ、マツバウンランなどの外国から入ってきた帰化植物が多く見られます。

土木工事などで環境が撹乱されると、繁殖力が強い帰化植物が優先してしまいます。街中の公園などで見かける草のほとんどはこのような外来の植物に占められ、日本古来の自然が少なくなっています。

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(写真7)ショウジョウバカマ

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(写真8)キランソウ

春の樹木の代表はサクラでしょう。公園内にはたくさんのソメイヨシノが植えられ、ベニシダレや八重桜の園芸種もあり、たくさんの人が花見を楽しんでいます。

ソメイヨシノが咲く頃には山の斜面でも野生のヤマザクラ(写真9)が点々と咲いているのを見ることができます。

その後、4月下旬にも別のサクラが山の中で咲いています。この遅咲きのサクラはカスミザクラ(写真10)という別種です。よく見ると小花柄、萼片、葉柄に毛があるので別名ケヤマザクラとも呼ばれます。

この毛は遅くまで残っているので花がない時期でも区別することができます。県内では中北部に多く分布しますが、西条周辺ではカスミザクラのほうが多いようです。

少し遅れて、ウワミズザクラ(写真11)の花が咲きます。サクラとは別のウワズミザクラ属に分類されていて、白い小さな花が穂状に集まって咲きます。

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(写真9)ヤマザクラ

10.4月下旬のヤマザクラとカスミザクラ.jpg
(写真10)4月下旬のヤマザクラとカスミザクラ

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(写真11)ウワズミザクラ

目立たない花ですが、ヤシャブシの仲間やコナラ、アベマキなどでは小さな雄花が穂状に集まって風に揺れています。このように小さな花をたくさん咲かせる植物は風によって花粉を運ばせる風媒花と呼ばれています。大量の小さな花粉を飛散させるのでスギなどとともに花粉症の原因となることもあります。

低木では、コバノミツバツツジが薄紫色の美しい花を咲かせています。憩いの森にはヒラドツツジやクルメツツジなどの園芸種がたくさん植えられていますが、野生種では、赤紫色のヒメヤマツツジ、朱赤色のヤマツツジ、白色のバイカツツジが咲きます。

また、ミヤマガマズミ(写真12)、アセビ、ネジキなどが白い花を咲かせ、ヒサカキやクロモジも目立たない花を咲かせています。

ガマズミの仲間は、3種類が自生していますが、ミヤマガマズミが最も多く花も早く咲きます。コバノガマズミは葉柄が短くビロード状の毛があります。ガマズミは葉が広くて大きく開花期が遅くなります。

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(写真12)ミヤマガマズミ


初夏の植物観察

5月にはハナミズキが咲きましたが、初夏にはたくさん植えられたヤマボウシ(写真13)の白い花を見ることができます。両種とも白く目立つのは葉が変化した苞葉で本当の花は中心に集まって小さく咲いています。

園路の傍ではいろいろな低木類が花を咲かせています。ウツギ(写真14)は卯の花とも呼ばれ卯月を代表する花で、日当たりが良い川沿いにたくさん生えています。元々は茎の中に穴が開いていることから「空ろ木」と呼ばれたことに由来します。ウツギはユキノシタ科ですが、同じ時期に咲くコツクバネウツギや植栽されたハコネウツギはスイカズラ科になります。

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(写真13)ヤマボウシ

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(写真14)ウツギ

アジサイもこの季節に咲きます。コガクウツギは白い装飾花がよく目立ちます。コアジサイ(写真15)は装飾花を作らず、青い小さな花を咲かせています。アジサイに近縁のイワガラミはつる植物で他の木によじ登って花を咲かせます。装飾花の萼片は1枚だけでアジサイ属とは異なります。

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(写真15)コアジサイ

キャンプ場の池には3種類の水草のガマが生えています。葉の幅が広く開花期が早い大型のガマとともに、葉が細くて穂も短いコガマ(写真16)と、細い穂で雄花序と雌花序が離れているヒメガマを見比べることができます。

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(写真16)コガマ

管理事務所周辺では、初夏に咲く帰化植物の花がたくさん咲いています。フランスギク、オオキンケイギク、ムシトリナデシコ(写真17)は景観草花として植えられたものですが、オオキンケイギクは特定外来生物として栽培が禁止されています。その他にニワゼキショウ、キキョウソウ、ブタナ、ヒメジョオン、ヘラバヒメジョオン、チチコグサモドキなどの帰化植物もこのころに花を咲かせています。
山道沿いでは、キク科の黄色い花を咲かせるタビラコ、ニガナ、ヤマニガナ、ジシバリなどを見ることができます。図鑑で調べて区別してください。

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(写真17)外来植物 フランスギク、オオキンケイギク、ムシトリナデシコ


夏の植物観察
暑い季節ですが谷沿いを歩くと、コバノギボウシ、ゲンノショウコ、キンミズヒキ、アキノタムラソウ、などの花を見ることができます。日当たりが良い場所では、ツリガネニンジン(写真18)、コウゾリナ、ボタンヅルが咲き、池や水路などの水辺ではアカバナ、コケオトギリ、チョウジタデ、アワモリショウマ、サワヒヨドリ、ヒシ、ヒルムシロの花を見ることができます。

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(写真18)ツリガネニンジン

谷あいの砂防ダムの水たまりでは珍しいトチカガミ(写真19)とヘラオモダカが見つかりました。近くの小さな水たまりでタヌキモの黄色い花を見つけ持ち帰って調べたところ、外来植物のオオバナイトタヌキモ(写真20)でした。人為的に持ち込まれたのではないかと思われます。

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(写真19)トチカガミ

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(写真20)オオバナイトタヌキモ(外来種)

道沿いではいろいろなつる植物を見ることができます。丈夫な茎を作るエネルギーを使わずに他の植物に頼って生長するいろいろな仕組みを作っています。ヒヨドリジョウゴは他の植物にかぶさるように伸びあがります。ヤエムグラやアカネは茎に小さな逆刺があり、ずり下がるのを防いでいます。フジ、ヤマノイモ、ヘクソカズラなどは巻きつきます。ノブドウやカラスウリは巻きひげを持ち、キヅタやイワガラミは付着根を持っています。


秋の植物観察

秋に咲く花の代表はキクの仲間です。谷沿いではシラヤマギクやイナカギク(写真21)の白い花とノコンギクの薄紫色の花を見ることができます。日当たりが良い草地ではアキノキリンソウの黄色い花が風に揺れています。尾根沿いの車道に侵入したセイタカアワダチソウもアキノキリンソウと同じ属ですが大型で密生し他の植物を威圧しています。

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(写真21)イナカギク

湿った場所には、ミゾソバ、イヌタデ、ボントクタデ、アキノウナギツカミ、ミズヒキなどのタデ科の植物が小さな花を咲かせています。タデ科の植物はよく似た種類が多いのですが、人里の雑草は限られていますので図鑑で調べて覚えてください。

秋の七草は、奈良時代の歌人山上憶良が作った和歌に詠みこまれた秋に咲く草花です。

「秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) かき数ふれば 七種の花」

「萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」(万葉集)

このうちの朝貌は今日のキキョウを指していると考えられています。これらの植物は当時から身近な里山植物として親しみ鑑賞していた種類ですが、最近では里山が放置されるようになり日当たりが良い草原が少なくなったため見る機会が少なくなりました。特にフジバカマとキキョウは絶滅が危惧される種に指定されています。

萩は万葉集の中で最も多く登場する植物です。憩いの森では花序が枝先に伸びるツクシハギと(写真22)花序が短く葉腋に集まるマルバハギ(写真23)が見られます。野生の萩をヤマハギと呼ぶことがありますが、本来のヤマハギは県北に分布し、中南部の山地には自生が見られません。

同じハギ属では、乾燥したやせ地に生える小型のメドハギと匍匐するネコハギがあります。ハギに似たコマツナギや草丈が低いナンテンハギも見ることができます。

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(写真22)花序が長いツクシハギ

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(写真23)花序が短いマルバハギ

気温が下がるにつれて、落葉樹は葉を落とし冬を迎える準備をします。憩いの森の斜面を遠くから眺めると、11月から始まる紅葉の変化を見ることができます。

先ずコシアブラやアカメガシワの薄い黄色の黄葉が始まります。それに続いて、黄色いタカノツメ、アオハダや赤いヤマザクラなどが紅葉します。

12月にはコナラやアベマキが黄褐色に紅葉します。アカマツ林や植林したスギ、ヒノキは緑色に残ります。また、落葉樹の中にはクロキやソヨゴの大きな木が点在し、園路沿いでは植えられたタブやシラカシヤマモモなどの緑が残りますので、遠くから森の様子を観察できます。

紅葉を代表するのはカエデの仲間です。谷間にはたくさんのイロハモミジが植えられて美しく色づきます。そのほかにも、夏の間も赤い色素を作るオオモミジの園芸種の「野村猩々」やハウチワカエデ、メグスリノキが植えられています。

野生種ではウリカエデがたくさん自生し、他にウリハダカエデ、カラコギカエデ、イタヤカエデ(植栽?)が見られました(写真24)。

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(写真24)龍王山のカエデ7種類

クスノキ科の落葉樹も美しく黄葉します。低木のクロモジ、葉が広くて3裂するダンコウバイ、尾根筋に見られるカナクギノキの3種は黄色になりますが、ヤマコウバシは赤茶色になり春まで枝から落ちません(写真25)。

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(写真25)クスノキ科の落葉樹4種類

ウルシ科の仲間も赤く紅葉します。いずれもかぶれる植物ですから樹液に触れないように注意して観察してください。葉は7対前後の小葉を持つ羽状複葉ですが、ヌルデは全体に毛が多く、中軸に翼が広がり褐色がかった赤色に紅葉します。

ヤマウルシとヤマハゼはよく似ていますので注意が必要です。ヤマウルシは小葉の側脈が少なく下位の小葉は丸くなり、黄色から橙色になります。ヤマハゼは小葉が細くて側脈が多く、鮮やかな赤色になります(写真26)。日当たりや栄養状態で葉の形や色が変異しますが、微妙な違いを判断してください。

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(写真26)ヤマウルシ(上)とヤマハゼ(下)

木に絡みつくツタ(ナツヅタ)も美しく紅葉します。ふつうは葉身と葉柄はつながったまま落葉しますが、この植物では赤くなった葉身部分が先に落ちて、その後葉柄が茎から離れ落ちます。

ヤマウルシの羽状複葉やコシアブラの掌状複葉でも小葉と葉柄の間に離層が作られ容易に離れます。このことから、ブドウ科の植物はもともと複葉を持っていたと考えられます。その証拠に、株元の細いツルについている葉を探すと3裂する複葉を見つけることができます(写真27)。

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(写真27)ツタの幼葉

植物は子孫を殖やすために、花を咲かせて受粉し、実を付けて種子を散布します。秋はいろいろな植物が実を付けているので、それぞれどのような方法で種子を散布しているのか観察することができます。

羽毛を持つキク科やキンポウゲ科の種子や、羽根を持つカエデ科やマツの種子は風を利用して種子を散布します。ゲンノショウコ、カタバミ、スミレ、ツリフネソウなどでは種子が成熟すると果実がはじけてその勢いで種子を遠くに飛ばします。

粘液を持つメナモミ(写真28)、チヂミザサ、アレチヌスビトハギの種子や、かぎ針を持つアメリカセンダングサ、イノコヅチ、オナモミの種子などは動物の体に付着して移動します。道沿いの草薮に入るといろいろな種子が服にくっついたことを経験していると思います。

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(写真28)粘液を持つメナモミの花序

軟らかい果肉を持つ種子は鳥が食べて種子を運びます。最初緑色の実は種子が成熟すると色を変化させて鳥に食べてもらうよう伝えます。

モチノキ科のクロガネモチ、アオダモ、ソヨゴ、ウメモドキやガマズミ類、ハナミズキなどの実は鮮やかな赤色になり鳥が好んで食べてしまいます。クロキ、タブ、ネズミモチは黒く色づきます。最近では、市街地に植えられたトウネズミモチの種子が鳥によって運ばれ、自然の山野に広がっています。種子の生産力が高く、在来のネズミモチを駆逐し昔からの生態系を撹乱しているので問題になっています。

ドングリはこどもに人気がある実です。憩いの森には、常緑樹のスダジイ、シラカシ、ウバメガシ、マテバシイが植えられアラカシが自生しています。また、落葉樹では、クヌギ、カシワが植えられ、アベマキ、コナラが自生しています。

クヌギとアベマキはよく似ていますが、葉の裏を見るとアベマキではビロード状の細かな毛が密生しています(写真29)。キャンプ場にはクヌギが植えられ、その横の自然の斜面にはアベマキがたくさん生えています。いずれも大きなドングリを付けるので子供の遊びに適しています。

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(写真29)クヌギ(上)と葉の裏がビロード状のアベマキ(下)


冬の植物観察

ヤシャブシの仲間はなかなか落葉しません。初冬になっても小さな松かさに似た実とともに葉を見ることができます。本来は太平洋沿岸の岩場に自生する植物ですが、広島県ではやせたはげ山にたくさん植えられ自然に広がっています。別名ハゲシバリとも呼ばれ3種類が利用されています。

オオバヤシャブシは大きな実が1 個ずつ付き葉の幅が広くなります。ヒメヤシャブシは小さな実が数個ずつ集まって垂れ下がります(写真30)。憩いの森では実が2 個ずつ付くヤシャブシを見ることができませんでした。同じ仲間のケヤマハンノキも谷沿いに自生しています。葉が広楕円形で、実は3~5 個が上向きにつきます。

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(写真30)ヒメヤシャブシ(左)とオオバヤシャブシ(右)

樹皮は生長に伴い、剥げ落ちたり割れ目ができたりします。若い木でははっきりとした特徴を見ることができませんが、成木になるとそれぞれの特徴を表して樹皮だけで木の名前がわかるようになります。

ヤマザクラは横向きに樹皮が剥げ落ちますが、スギやヒノキ、ネズでは縦向きに剥げます。リョウブやサルスベリ、ナツツバキでは薄い樹皮がめくれるように剥がれてその下からなめらかな樹肌が表れます。

カラスザンショウ(写真31)の樹肌には鋭いとげがたくさん生えています。アセビやネジキの樹皮には細かな縦筋が入り全体がねじれていきます。

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(写真31)カラスザンショウの樹皮

ウラジロノキやハナミズキは石垣のように樹皮が割れ、ウリカエデやアオギリは緑色の樹皮を保っています。シダの仲間は似ている種類が多いのですべての名前を覚えるのは困難ですが、特徴的な形の代表的な種類は覚えておいてください。

園路沿いの斜面ではウラジロ(写真32)を見ることができます。その名の通り葉の裏側が白いシダです。このシダは1 枚の葉が数年かけて生長します。

春に新しく伸びた葉は1 段目の羽片だけが展開して生長を止めます。翌春は2 段目の羽片を展開し再び生長を止めます。一枚の葉がこれを数年繰り返して生長する面白いシダです。

このため、子孫が代々つながるように願う縁起良い植物として、正月のしめ縄や鏡餅に飾られます。

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(写真32)縁起が良いウラジロ

同じ仲間のコシダも乾燥した斜面に生えています。コシダの葉も二又分岐を繰り返しながら展開する不思議な形になります。

冬にはワラビやゼンマイなどの落葉性のシダは休眠して枯葉になっていますが、反対に秋から葉を拡げるシダもあります。

一枚の緑色の栄養葉と穂状に伸びた胞子葉が並んで出てくるフユノハナワラビを見ることができます。このシダは落葉樹が葉を落とし他の草が枯れた後の日差しを利用して生活しています。このため、他の植物が葉を拡げる春には枯れて休眠します。

このように冬の光を利用する植物を冬緑型植物と呼びヒガンバナもその一つです。

龍王山ではまだまだたくさんの種類の植物を観察することができます。登山や散策の途中にちょっと足を止め、植物だけでなく、昆虫や鳥などの自然の姿に触れてみてください。

東広島の自然(2011.3)No.42 掲載

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