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オオサンショウウオのすむ川とすまない川の環境調査

行事報告

オオサンショウウオのすむ川とすまない川の環境調査

実藤 里奈

 東広島市豊栄町には、太田川水系、江の川水系、沼田川水系の河川があり、それぞれの河川でオオサンショウウオの生息が知られていた。しかし、河川改修などの影響によって、現在ではオオサンショウウオの生息が聞かれなくなった地域もある。そのため、オオサンショウウオの生息する河川と、生息しない河川にはどのような環境の違いがあるのかを比較検討した。

 調査は、椋梨川上流部(沼田川水系)、三篠川上流部(太田川水系)、仮称別府川(椋梨川水系)、吉原川(江の川水系)の11 調査区を対象として、生息調査、生息状況聞き取り調査、河川環境調査を行なった。

 生息状況の調査は、椋梨川については2011 年から行い、5 調査区ともに生息を確認し、そのうちの最上流部の調査区において繁殖を確認している。三篠川の2 調査区においては2013 年から調査を行い、両調査区ともに生息を確認しており、上流の調査区においては2 か所でヌシの存在を確認している。別府川についは、住民への聞き取り調査により、2 調査区のうちの下部の調査区において、2013 年に1 頭の生息情報があったのみで、2014 年の生息調査でも生息の確認ができなかった。吉原川の2 調査区については、住民への聞き取り調査の結果、昔は生息していたが河川改修が行われたりして近年は生息情報がない。

 11 調査区の河川環境調査は2013 年8 月から12 月にかけて行い、護岸と河床、寄り洲、堰堤、河川勾配、蛇行等について記録した。その結果、護岸に関してオオサンショウウオの生息状況を見た場合には、自然護岸率の高い調査区と、人工護岸率の高い調査区では大きな差は見られず、生息に関して護岸は比較的重
要ではないと予想された。しかし、繁殖を確認できた区では、自然護岸率が70%以上となったため、繁殖が行われるためには自然護岸率が70%以上の環境が望ましいということが分かった。河床に関しては、自然河床率が70%以上の調査区では生息情報が得られたが、コンクリート河床のみの調査区においては生息情報が得られなかった。この結果からオオサンショウウオの生息には河床の自然率が重要であると考えられる。しかし、河床の自然率が高くても、オオサンショウウオの遡上が困難となるえん堤が複数存在する調査区では、オオサンショウウオの生息情報が得られなかった。この結果から、えん堤が障害となり流下個体が元の生息場所に戻ることができなくなっていると予想される。また、河川の蛇行があまり見られなかった調査区においても生息情報は少なかったため、河川の蛇行はオオサンショウウオの生息に影響を与える重要な要素ではないかと考えられる。

 今回、各調査区において住民への聞き取り調査を行ったことによって、過去のオオサンショウウオの生息状況を記録することができた。今後、生息調査を継続することによって各調査区の現在の生息状況の実態を把握していくとともに、聞き取り調査の範囲を拡大してより多くの記録を残したいと考えている。また、各河川の集水域における土地利用についても調査し、オオサンショウウオの生息する河川環境についての条件を検討していきたい。


第11回日本オオサンショウウオの会 東広島大会において発表
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豊栄町清武西地域センター(サブ会場)2014.9.28

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