体験! 発見!! オオサンショウウオがすむ河川
体験! 発見!! オオサンショウウオがすむ河川 (1)
2014年9月27~28日に,日本オオサンショウウオの会全国大会が東広島市豊栄町で開催されます。3月16日(日)にはこの大会の関連企画として,第18回東広島市文化財講演会『体験! 発見!! オオサンショウウオがすむ河川』と題して,親子観察会が行われました。主催は日本オオサンショウウオの会東広島大会実行委員会,共催は東広島市教育委員会・東広島市自然研究会,協力は広島大学総合博物館,講師は日本オオサンショウウオの会会長の桑原先生,場所はいつもの調査を行っている椋梨川上流です。
13時までに豊栄町清武西地域センターに,親子約50名,スタッフの東広島市教育委員会文化課・東広島市環境対策課・広島大学総合博物館・東広島市自然研究会・東広島市オオサンショウウオの会など30数名が集合しました。取材メディアとしては,NHK,KAMON-CATV,FM東広島,中国新聞社の方が来られました。
13時より実行委員会事務局長さんの進行により開会式が始まり,東広島市教育委員会文化課課長さんの挨拶,広島大学総合博物館さんによるプログラムの説明などがありました(写真2)。
第一部は,第一会場において,オオサンショウウオと共生している生き物たちを探すものです(写真3~5)。
到着後,講師の桑原先生や副講師の広島大学総合博物館の清水先生のお話(オオサンショウウオが住む川のこと,生き物たちのこと,川に入るときの注意事項など)がありました(写真6~7)。その後,それぞれに網やバケツを持って川に入りました(写真8)。
川の中では,最初に清水先生に網ですくう方法や生き物たちの見つけ方を教わりました(写真9~11)。
結構水は冷たいですが,採取に夢中で,長靴が水没しても平気な子供さんも(写真15)。
水深が深いところでは,桑原先生の指導のもと,子供達は陸上から網を出し,広島大学の学生さんに魚などを追い込んでもらいました(写真16)。
川から上がったら,生き物たちを分類しながら,名札の付いたバケツに入れます(写真18)。
桑原先生に,魚・ヤゴ・両生類などを教わりながら,仕分け作業を行いました(写真19~20)。
日本オオサンショウウオの会全国大会in東広島
関連企画 第18回東広島市文化財講演会 チラシ
講演要旨
日本オオサンショウウオの会全国大会in東広島 関連企画
第18回東広島市文化財講演会
「体験!発見!オオサンショウウオがすむ河川」
日本オオサンショウウオの会 会長 桑原一司
東広島市豊栄町の椋梨川にオオサンショウウオが住んでいることは住民の間では知られており、地元住民による保全活動もあったが、2011年に学術的な調査による確認がなされ、豊栄町は新しい生息地として全国に知られることになった。
かつては、西条盆地や賀茂台地を流れる河川には広くオオサンショウウオが生息していたと考えられるが、現在においては群れの生息が確認できるのは、豊栄地区の沼田川水系椋梨川上流のみである(豊栄地区の太田川水系三篠川上流にも生息地があるが、本日はふれない)。よって、豊栄の生息地は、呉市から福山市に至る地域において瀬戸内に注ぐ河川で唯一残された生息地であり、豊栄町のオオサンショウウオは極めて重要な生息群である。
豊栄のオオサンショウウオを守る会、東広島市自然研究会、広島大学博物館、東広島市教育委員会などが協力して「東広島オオサンショウウオの会」を作り調査をした結果、2011年8月から今日までの2年半の間に、豊栄町後谷地区と向谷地区の椋梨川で27頭のオオサンショウウオの生息を確認し、また、向谷上流部で2つの産卵巣穴と数百頭の0歳幼生(全長45㎜~50㎜)を発見した。しかし、成体の多くが全長が65㎝~85㎝の巨大個体で、10㎝~50㎝の若い個体が見つからないため、何らかの要因により次世代の育成が妨げられていると思われる。豊栄町椋梨川の個体群は、かろうじて残存している個体群であり、生息環境も十分に良好とはいえない。これからも研究と環境の改善を含めた保全活動の継続が必要である。
本日は、向谷地区のサンダタ堰付近の椋梨川で、オオサンショウウオと共に暮らしている川の生物の採集と観察を行う。水温が6度という冷たい川であるがオオサンショウウオは元気に動き、川の中ではたくさんの水生昆虫や魚が冬越しをしている。以下は本日観察できる主な生きもののリストである。
爬虫類:クサガメ(甲羅の後縁がなめらか)、イシガメ(甲羅の後縁がギザギザ)
両生類:ツチガエル(体にいぼ状のしわがある)、ニホンイモリ(お腹が赤い)
魚類:カワムツ(体側に黒い縦帯がある)、タカハヤ(体に細かいゴマもよう)、ドンコ、カワヨシノボリ、アカザ(ナマズの子どものような形、胸びれと背びれにとげがある)
水生昆虫
トンボのヤゴ:オニヤンマ(くさび形のヤゴ、泥をつけている)、コオニヤンマ(触角がうちわ形)、コヤマトンボ(触角が角形)、コシボソヤンマ(鎧を着たような体)、ヤマサナエ(紡錘形のヤゴ)、ニホンカワトンボ(細い体のヤゴ)
トビケラ類:イモムシ型の幼虫で、落ち葉や小石をつづって巣をつくる。
カワゲラ類:2本の尾をもつ川虫。
カゲロウ類:3本の尾をもつ川虫。
その他の生きもの:ヘビトンボの幼虫(ムカデのような形の幼虫。)ガガンボの幼虫(白いイモムシ型の幼虫でのびちぢみする。カを巨大にしたような成虫になる)、ヨコエビ(ダンゴムシを横だおしにしたような生きもの、これで成虫)、ミズカマキリ、ゲンゴロウ、カワニナ(ゲンジボタル幼虫の餌)
これらの生きものは、オオサンショウウオのいる川に特徴的に見られる生きもので、きれいな水にすむ生きものたちである。これらの生きものとオオサンショウウオとは食べたり食べられたりの関係で一緒に生きている。春先に、一つの産卵巣穴から1000匹ものオオサンショウウオの子どもが川に出ていくが、ヤゴや魚やカメやサギなどに食べられて、20~30年後に親になる確率は1000分の1くらいである。その確率が少しでも減少すると、オオサンショウウオが消滅へと向かうことは容易に想像できる。絶妙のバランスの中で生きているオオサンショウウオを保全するのは難しい取り組みである。しかし、オオサンショウウオの調査と保護の実践を通じて、私たちは自然と人間の共存の方法を学ぶことができ、その結果として、豊かな自然環境を未来に残すことができる。
保護者の皆様へ:この講演要旨の内容は、本日の観察会の中で易しく解説され、親子で体験的に学びます。その理解の補助として、この講演要旨を保護者の皆様に向けに作りました。生きものの分類や人と自然の共存の解説は、大人の理解を通じて、子どもたちに伝えていただければ幸いです。
当日の資料