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賀茂台地形成の謎を探る

行事報告

賀茂台地形成の謎を探る

平成24年7月21日(土)

(1)“賀茂台地形成の謎を探る”巡検 17名参加
(2)広島大学総合博物館企画展「ワンダーシー・瀬戸内海の魅力」見学と講演会聴講

報告 調枝 勝幸

(1) “賀茂台地形成の謎を探る”巡検

 講師:沖村先生、案内者:吉中会員

 コースは、会報「東広島の自然」41,29-30 に吉中隆義会員の紹介が掲載されている。今回はこれに加えて、沼田川沿いの瀑雪の滝も見学。

① 河内町入野大仙:礫岩層
 大仙地区登り口(標高310m)のヘアピンカーブから約40m登る間に、所々で高さ2~3mの礫岩層の露頭が観察できた(写真1)。主としてこぶし大から人頭大の円礫の間を半固結の中粒砂質基質が埋める。礫は主に流紋岩で砂質部分とともに風化は進んでいない。砂質主体のところでは扁平礫もみられる。周辺の基盤岩は広島花崗岩類のみのため、ここに形成された礫岩層は遠方の流紋岩類の分布域に起源を発する河川堆積層と考えられる。沖村先生から、「同じ河川堆積物から成る西条層よりは固結度の面から時代が古く、県北に広がる備北層群よりは新しい可能性がある。備北層群が中国地方の海進期に形成されたのに対して、海退期の地層がほとんど見つかっていない。ここの地層は古瀬戸内海海退期の地層では」との解説があった。詳しくは、 沖村雄二(2010):東広島市の自然誌(Ⅲ).13p東広島市自然研究会を参照。

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写真 1

② 瀑雪の滝
 東広島市河内町から三原市本郷町にかけて賀茂台地と世羅台地を二分する沼田川沿いに県道を進む。本郷町船木に至ってJR山陽本線の北側200m、標高100mの地点に「瀑雪の滝」がある。世羅台地南端の大和町に源を発し開析が進んだ沼田川船木峡の急峻な谷壁まで至り、幅4m、落差30mの滝となって落下する。周辺は大きく方状節理の発達した中粒の広島花崗岩岩体で、滝の上部先端には節理に沿って形成された巨岩が横たわって今にも落下しそうな景観を呈している。吉中会員から、2001年の芸予地震でこの岩が動いて流れが変わったとの紹介があった(写真2)。

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写真 2

 案内書によると、ここから上流約60mと更に100m上流にも滝があるが、時間の都合で下山。瀑雪の滝は右岸側の女王滝とともに急速に進んだ沼田川の下刻に伴ってできた代表的な懸谷として推測されている。この付近では沼田川河床から両岸の台地面まで落差が300m以上あり、船木断層線に沿って発達した沼田川の下刻作用が急激であったことが伺える。下山時、堀越先生からタラヨウ(多羅葉)に関して“葉書”の由来を楽しく教えて頂いた(写真3)。

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写真 3

船木断層:せん断破壊面
瀑雪の滝入口の下流約1.1㎞で、道路端に車を止めて対岸の谷壁を双眼鏡で観察。北面上部の垂直に露出した約20×50m前後の岩体東端に、縦縞様の柱状節理が認められた(写真4)。

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写真 4

 吉中会員から、この節理は芸予地震後に岩体の一部が崩落した跡に現れたことが紹介された。通常、花崗岩体には、瀑雪の滝でも見られた方状節理が発達するが、ここでの縦縞様節理は沼田川渓谷の形成に関係した舟木断層の断層運動に伴ってできた“せん断破壊面”が現出したのではとの説明があった。

③ “まわり地層”
 三原市久井町土取、山陽自動車道高坂PAの南東500m、県道50号線の道路端から農地へ5~10m入った地点で、高さ2~3m幅6~7mの砂層と礫層から成る露頭が観察できた(写真5)。“まわり地層”は道路がまわっている地点で観察できることから付けられた通称。

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写真 5

土地分類基本調査「尾道・土生」の5万分の1表層地質図では下位の塩町層の上に不整合で広がる礫砂・粘土層とされている。また、『日本の地質7中国地方』(1987,共立出版)では,新第三系中新統の高坂層として扱われている。この層は,石英質砂岩からなる下部層と砂礫層からなる上部層からなる。上部層の砂岩から貝化石が発見されている。地層の固結度はやや緩く、くさり礫が多いことからも①でみた地層よりも新しいと考えられる。

④ 吉田山甌穴群(三原市久井町土取)
 “まわり地層”の露頭から更に東へ数百メートル進むと仏通寺川の河床(標高330m)が現れる。現在の川床から東に25m,標高340mに旧川床があり、様々な形の甌穴がある。これは,河底の花崗岩質岩盤にできた割れ目やくぼみに入った小石や岩石の破片が,うず巻き流によって回転し,くぼみが拡大してできたと考えられている。現在の河床より高位にあり、“まわり地層”に覆われていた化石甌穴として,昭和55 年4月1日,「吉田山甌穴群」の名称で, 三原市の天然記念物に指定されている(写真6)。(ホームページ“尾三・福山地域のおもな地質教材”参照)。

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写真 6


(2)「ワンダーシー瀬戸内海の魅力」

場所:三原市リージョンプラザ

① 公開講演会(14:00~16:40)
「近世瀬戸内の暮らしと自然」佐竹 昭
(広島大学総合科学研究科教授)
江戸時代以降の沿岸地域開発の歴史を紹介
「山河森海の幸、瀬戸内ワンダーシー」長沼 毅
(広島大学生物圏科学研究科准教授)
海棲生物と里山のかかわりの大切さを紹介
② 展示見学
“クジラが泳いでいた海”、“豊かな海”、“海と山のかかわり”、“人々のくらし”、“これからの瀬戸内海”の5ゾーンに分けて主に広島大学総合博物館のナウマンゾウの全身骨格、庄原クジラ化石、備北層群化石、オオサンショウウオ、瀬戸内海天然記念物関係標本等が展示されていた。 以上

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自己紹介  調枝勝幸(ちょうしかつゆき)
 1944年、旧豊田郡本郷町生まれ。1967年から島根県工業試験場で窯業原料や金属鉱床の広域調査(北島根、益田地区)に携わる。5年後に広島県衛生研究所に移り温泉水、地下水調査を担当。1975年から新たに組織された県保健環境センターに移籍、水質、大気、廃棄物等の環境問題に取り組む。2005年定年退職。現在、西条に住まいしていることもあって、2011年から東広島市自然研究会に加えて頂いたのを機に、様々な行事に参加できるよう体力と感性を鍛え直しています。

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